2016 Fiscal Year Research-status Report
皮膚におけるアミノ酸代謝の紫外線被曝による影響のオミクス解析
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15K07440
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture |
Principal Investigator |
大石 祐一 東京農業大学, 応用生物科学部, 教授 (00313073)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | アミノ酸 / ゲノミクス / メタボロミクス / 紫外線 / 皮膚 / システイン |
Outline of Annual Research Achievements |
アミノ酸は、体内でタンパク質の構成成分としてだけでなく、mTORなどの細胞内シグナル因子の活性化や、旨味成分などとして重要な役割を果たしている。アミノ酸代謝に関する研究は、肝臓、骨格筋などで盛んに行われているが、紫外線(UV)などの外部刺激を最も敏感に受ける皮膚での代謝については不明な点が多い。そこで、研究代表者は、皮膚でのアミノ酸代謝について明らかにし、他の組織と比較するとともに、UV被曝による皮膚でのアミノ酸代謝への影響をオミクスを用いて分子レベルで検討することにした。 昨年度は、UV刺激を受けたあるいは受けていないヘアレスマウスの皮膚中のアミノ酸代謝に関わる酵素について、mRNAレベルをゲノミクス、アミノ酸およびアミノ酸に関連する分子をメタボロミクスにて解析し、肝臓、骨格筋のアミノ酸およびその代謝関連酵素と比較した。その結果、UV照射によって皮膚で多くの遺伝子変動が認められ、肝臓でも多くの遺伝子が増減した。皮膚中ではシステイン(Cys)量が著しく増加した。 そこで、本年度は、Cys代謝に関わる分子について検討したところ、還元型グルタチオン量の増加、タウリン量の減少が認められた。還元型グルタチオン量の増加は、分解に関わる酵素γーグルタミルトランスフェラーゼの減少によることが考えられ、UV照射により増加した活性酸素種の除去のためと考えられた。さらに、グルタチオンは、還元型とともに、酸化型も増加した。ここには、酸化酵素グルタチオンペルオキシダーゼ増加と還元酵素グルタチオンレダクターゼ減少が関わっていると考えられた。 タウリン量減少は、Cysからのタウリン合成に関わるcysteine sulfinic acid decarboxylaseの減少に起因すると考えられた。皮膚中タウリンの減少によってCysの消費が抑制され、Cys量増加に繋がったと考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度および平成28年度における「プロテオミクスによるアミノ酸代謝に関わるタンパク質の臓器間比較」ができていない。それは、来年度に行う予定である「紫外線によるアミノ酸代謝の変動するメカニズムの解明」を行ったこと、さらに、平成27年度に用いたヘアレスマウスがアルビノ種であり、メラニンを産生するマウスを用いた皮膚でのアミノ酸代謝の研究がより重要課題と考え、平静28年度にその予備を行ったためである。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は、平成27年度および28年度に引き続き、アルビノ種およびメラニン合成可能マウスを用いたゲノミクス、メタボロミクスの解析を進める。さらに、遺伝子レベルで変化のあった酵素等については、プロテオミクスあるいはウエスタンブロッティング法を用いて、タンパク質レベルでも検討する。
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Causes of Carryover |
ほとんど予定通りの支出であったが、端数が生じたため、その金額を次年度使用額に組み入れた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度においては、ほぼ予定通りの使用を予定している。
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Research Products
(11 results)