2015 Fiscal Year Research-status Report
食後高脂血症発症メカニズムの解明とその改善作用を有する食品成分の同定
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15K07441
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture |
Principal Investigator |
高橋 信之 東京農業大学, 応用生物科学部, 准教授 (50370135)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 食後高脂血症 / 脂質異常症 / 脂質代謝 / 脂肪酸酸化 / 腸管上皮 / PPAR / 炎症 / 食品成分 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、食後高脂血症は、空腹時血中脂質濃度よりも動脈硬化性疾患リスクとして重要であると考えられている。腸管上皮組織における管腔側からリンパ管への食事由来脂質の輸送は食後の血中脂質濃度を決定する重要な過程である。この脂質輸送を抑えることが出来れば、食後高脂血症を効果的に抑制可能と考えられる。これまでの研究において、ペルオキシゾーム増殖剤応答性受容体α(PPARα)の活性化を介して、腸管上皮細胞内での脂肪酸酸化を亢進させることで脂質輸送を抑えることができることを示した。しかし一方で、腸管における炎症が小腸上皮組織を介した脂質輸送を増大させることが報告されている。そこで本研究では、炎症と小腸上皮組織でのPPARα活性ならびに脂肪酸酸化活性との関連を検討し、さらに抗炎症作用を有する食品成分による炎症を伴う病態下における食後高脂血症の改善が可能であるかという検討を目的として研究を進めている。 初年度である平成27年度は、高脂肪食により食後高脂血症が悪化するかどうかの検討を動物レベルで実施した。これまで(1)高脂肪食により腸管で炎症が誘導される、(2)炎症により発現が増加したTNFαによって食後高脂血症が悪化する、という個別の報告がある。そこでまず高脂肪食によって食後高脂血症が悪化するかどうか検討するため、普通食(10カロリー%脂肪食)と高脂肪食(60カロリー%脂肪)をそれぞれ1週間摂取したバウスを用いて、経口脂肪負荷試験(OFTT)を行った。その結果、高脂肪食摂取したマウスでは、普通食摂取のマウスに比べて有意に食後高脂血症が悪化しており、高脂肪食が食後高脂血症増悪化に関与することが示された。現在、その関与が炎症を介したものかどうか、検討している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初、10カロリー%脂肪である普通食と比較して、どの程度の高脂肪が食後高脂血症に影響しうるか明らかではなく、30~60カロリー%の複数の高脂肪食を検討し、60カロリー%の高脂肪食で明確に差が観察されるという実験条件を設定するのに、予想以上に時間がかかった。また普通食摂取マウスと高脂肪食摂取マウスとで摂取カロリーを同じにするためにペアフィーディングを行ったが、通常の方法で行うと、飼料の脂肪含量を変化させることで、食物繊維などの他の成分の含量も変化していることに途中で気付き、その問題を解決するため、やり直しの実験を複数回、行わざるをえなかった。そのため、腸管での炎症が関与するかどうかまで平成27年度で明らかにする予定であったが、間に合わなかった。 上記のように、動物レベルで高脂肪食が食後高脂血症を悪化させるかどうか明確にならなかったため、細胞レベルでの検討が先送りになった。このため、平成27年度に予定していたCaco-2細胞を用いた細胞レベルの炎症誘導系の確立が間に合わなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
上記、「やや遅れている」ことの理由で挙げた問題点は既に解決されているため、平成28年度は食後高脂血症を悪化させた高脂肪食負荷条件で、腸管での炎症が誘導されているか、炎症により調節されるシグナル伝達系の活性化をウエスタンブロッティングにより、炎症性サイトカインの遺伝子発現レベルを定量的PCRにより、それぞれ検討する。特に代表的な炎症性サイトカインであるTNFαが関与しているかどうかを明確にするため、TNFαノックアウトマウスの利用も考え、高脂肪食により誘導される炎症が食後高脂血症に影響するかどうかを動物レベルでも明らかにすることを試みる。 また動物レベルと同様に遅れていた細胞レベルの検討についても、LPSなど炎症を誘導する薬剤を用いて、Caco-2細胞での脂質輸送にどのような影響があるかを調べる。平成27年度に実施できなかった炎症誘導条件下での細胞アッセイ系確立であるが、炎症を誘導していない条件下でのアッセイ系は既に確立されているため、平成28年度の計画に変更の必要はない。当初の予定どおり、抗炎症作用を有する食品成分の詳細な機能解析まで実施する。
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Causes of Carryover |
論文作成において英文校閲を外注するため予算を計上していたが、一部、計画が遅れたこともあり、論文作成に至らなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度は、計画通りに研究を進めることが出来れば、論文作成を期待できるため、次年度使用額は問題なく使用できる予定である。
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Research Products
(2 results)