2016 Fiscal Year Research-status Report
視床下部の軽度慢性炎症によるエネルギー代謝異常の誘発機構解析
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15K07442
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Research Institution | Tokyo University of Pharmacy and Life Science |
Principal Investigator |
高橋 勇二 東京薬科大学, 生命科学部, 教授 (20154875)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ストレス応答 / 視床下部 / 転写因子 / 有機スズ |
Outline of Annual Research Achievements |
肥満と糖尿病を含む代謝性疾患、さらに、アルツハイマー病やうつ病のなどの精神疾患に共通した病態として軽度慢性炎症の存在が明らかになりつつある。しかし、炎症の発症機序および炎症と各病因との関連は必ずしも明らかではない。申請者は、視床下部を含めた神経系組織の軽度慢性炎症に注目し、ストレス応答性転写因子ATF5の機能解析を進めることを研究目的としている。 本年度は、神経組織におけるATF5の標的遺伝子を探索することを目的に、マウス嗅上皮を材料にChIP実験を行うこととした。始めに、マウスの嗅上皮核クロマチンを用いたChIP実験で実績のあるH3K9me3抗体を用い、ChIP実験系の確立を試みた。成体マウスの嗅上皮から核クロマチンを調製し、H3K9me3抗体で免疫沈降を行いウエスタンブロット法により検出した。その結果、約16kDの位置にH3K9me3タンパク質のシグナルが確認された。次に、H3K9me3抗体を用いたChIP-qPCR実験を行った。嗅細胞におけるヘテロクロマチン領域であるZFP560遺伝子座と、活性型クロマチン領域であるMgat1遺伝子座に特異的プライマーを設計し定量PCRを行った。その結果、H3K9me3 ChIPにより、Mgat1遺伝子、IgGネガティブコントロールと比較し、ZFP560遺伝子DNA領域を有意に濃縮することが出来た。現在ATF5抗体を用いたChIP解析を次世代シーケンサを用いて行いデータ収集を終了し解析中である。 ATF5欠損マウスを用いて視床下部神経幹細胞の分裂と分化におけるATF5の分子機能を明らかにするための、BrdU投与によるモデル実験を行い、Ki67とBrdUの共存を確認した。次に、視床下部軽度炎症モデル実験として有機スズ投与系を確立した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は以下の3項目を設定し、次の状況でほぼ予定に準じて研究が進行している ①視床下部神経新生へのATF5の関与:ATF5欠損マウスを用いて視床下部神経幹細胞の分裂と分化におけるATF5の分子機能を明らかにする。BrdU投与によるモデル実験が終了している。 ②栄養素過剰による軽度慢性炎症へのATF5の関与:主にATF5欠損マウスに高脂肪食を供して視床下部の軽度慢性炎症を誘発し、炎症発症抑制におけるARF5の分子機能を明らかにする。高脂肪食による軽度炎症に変えて、有機スズ投与による軽度炎症発症の実験系を作りつつあり、ほぼ予定に準じて進んでいる。 ③神経再生及び炎症発症に関するATF5下流因子の同定:トランスクリプトーム解析を応用し炎症発症時においてATF5によって発現制御を受ける因子を同定し、ATF5による遺伝子発現調節機構と抗炎症作用の機序を明らかにする。研究実績に記したようにほぼ予定に準じて研究が進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、視床下部炎症の指標の一つとして、神経細胞増殖脳の検討を行う。胎児期14 日目(E14)、あるいは、胎児期15日目(E16) に200 mg/kg のBromodeoxyuridine (BrdU)を腹腔内投与し、その3 時間もしくは24時間後に、頭部を摘出する。頭部は4 % PFA/PBS で固定した後、包埋・凍結した。その後16 μm で薄切し、スライドガラスに貼り付けた切片を用いて免疫組織化学染色を行う。視床下部神経細胞の分化とATF5 の関連を明らかにするため、ATF5+/+マウスとATF5-/-マウスを用いて、BrdU 投与3 時間後の脳においてBrdU とKi67 (M 期マーカー)の抗体を用いて免疫組織化学染色を行う。BrdU 陽性細胞とKi67 陽性細胞の視床下部における存在を観察する。また、増殖サイクルを脱出した細胞の割合を示すCell cycle exit index(BrdU(+)・Ki67(-) cells / BrdU(+) cells)を算出する。 同様にBrdU 投与24 時間後のマウス脳で解析する。未成熟ニューロンマーカーDoublecortin(DCX)の発現を免疫組織化学染色により解析し、細胞の分化度におよぼすATF5の役割を明らかにする。また、同時期のマウス胎児に、有機スズ化合物を投与し、脳の炎症を惹起し、同様の解析を行う。
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Causes of Carryover |
本研究の研究計画の一部として条件的ATF5欠失マウスの作成を挙げている。作成をこころみているが、 ES細胞を作成する段階で困難にあって、支出義務が生じる段階に至っていない。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
条件的ATF5欠失マウス作成のストラテジーを再検討し今後とも粘り強く検討を続ける。
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