2016 Fiscal Year Research-status Report
新規褐色脂肪化因子による褐色脂肪化メカニズムの解明と応用基盤の確立
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15K07446
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Research Institution | Tezukayama Gakuin University |
Principal Investigator |
楠堂 達也 帝塚山学院大学, 人間科学部, 准教授 (00460535)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | CREG1 / 褐色脂肪化 / 抗肥満 |
Outline of Annual Research Achievements |
●CREG1による褐色脂肪化メカニズムの解明 平成27年度の固定化カラムを用いた相互作用実験の結果、CREG1と相互作用する複数の分子が得られた。平成28年度はCREG1による褐色脂肪化にそれらの分子が関与していることを褐色脂肪細胞のマーカー遺伝子であるUCP1のレポーターアッセイ系を用いて解析した。遺伝子、及びリガンドに関して様々な組み合わせを検討したところ、UCP1のプロモーター活性をCREG1と協調して上昇させる因子を発見した。また、CREG1による褐色脂肪分化促進作用に甲状腺ホルモン系が関与することが示唆された。CREG1と甲状腺ホルモン系の関係を明らかにするために、CREG1が細胞内甲状腺ホルモン濃度に与える影響について検討することとし、LC-MS/MSを用いた細胞内甲状腺ホルモン測定系の開発を行った。また、実験計画に従い、CREG1による褐色脂肪化メカニズムの解明を目的とした別アプローチとして、トランスクリプトーム解析を開始した。C3H101/2細胞の褐色脂肪分化過程におけるCREG1の役割を明らかにするためCREG1ノックダウン、CREG1ノックダウン+リコンビナントCREG1のサンプルを調整し次世代シーケンサーにて現在解析中である。 ●個体レベルでのCREG1の生理作用の検討 脂肪細胞特異的トランスジェニックマウスに関しては第6世代までの戻し交雑が終了したことから解析を進めている。これまでのところ脂肪細胞特異的トランスジェニックマウスはコントロールマウスに比べて高脂肪食摂取による肥満に抵抗性を示すという結果が得られている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
CREG1による褐色脂肪化メカニズムの解析に関しては、平成27年度の固定化カラムを用いた相互作用解析からいくつかの候補分子が得られている。その結果を受け、平成28年度はレポーターアッセイを中心とした解析を行い、甲状腺ホルモン系が深く関わっている等のメカニズムに関するデータが得られてきている。また、当初計画より1年遅れとなったが、次世代シーケンサーによるトランスクリプトーム解析を開始した。本実験によりCREG1特異的な応答遺伝子群が明らかになれば、より詳細なメカニズムの解明につながると期待される。一方、個体レベルの解析に関しても、浸透圧ポンプを用いた実験よりCREG1が抗肥満、耐糖能の改善作用を有することを示し抗メタボリックシンドロームの有力なターゲットとなることが明らかとなった。さらに脂肪細胞特異的CREG1発現マウスを用いた実験から、脂肪組織特異的なCREG1の発現により皮下脂肪組織、後腹壁脂肪組織が顕著な褐色脂肪化を示すこと、さらに本マウスが高脂肪食摂取による肥満に対して抵抗性を示すことを明らかにしている。これまでに得られたデータはNature Communicationsに投稿中である(under revision)。以上のことから、研究の進行状況に関してはおおむね順調である。
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Strategy for Future Research Activity |
上記のように、研究の進捗状況についてはおおむね順調に進行しており、次年度も研究計画に沿って研究を進める予定である。CREG1による褐色脂肪化メカニズムの解明については、平成28年度に開発した測定系を用い細胞内甲状腺ホルモン濃度に対するCREG1の影響を検討する。また、次世代シーケンサーで得られたデータを活用し、発現量解析、クラスタリング解析、ネットワーク解析を行う。さらにCREG1の分化作用が褐色脂肪特異的な作用なのか白色脂肪細胞も含めた脂肪細胞全体への作用なのかという点についても明らかにしていく予定である。平成29年度は最終年度であることから、これまで得られたデータを組み合わせ、CREG1による褐色脂肪化メカニズムに関する総合的な理解を目指す。 一方、実験計画に従って、CREG1遺伝子上流4 kbをクローニングしCREG1レポーターアッセイ系を構築する。培養細胞系を用いてアドレナリンや、インスリン、甲状腺ホルモン等、様々な刺激におけるレポーター遺伝子の応答と、リアルタイムPCRによるCREG1発現量を比較することでCREG1遺伝子の発現制御を明らかにするとともに、CREG1の発現上昇作用を有する物質のスクリーニング系を開発する。
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Causes of Carryover |
トランスクリプトーム解析を受託したが、解析が年度をまたいだため受託費用の支払いが次年度となった。そのため一部を繰り越した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
トランスクリプトーム解析の支払いにあてる。
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