2016 Fiscal Year Research-status Report
新規に得られたグルテリン前駆体蓄積米の栄養学的意義の解明
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15K07449
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Research Institution | Aomori Prefectural Industrial Technology Research Center |
Principal Investigator |
齋藤 知明 地方独立行政法人青森県産業技術センター, 工業部門, 総括研究管理員 (60505569)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
前多 隼人 弘前大学, 農学生命科学部, 准教授 (80507731)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | プログルテリン / レジスタントプロテイン / 脂質吸着性 / 抗肥満作用 |
Outline of Annual Research Achievements |
酒粕および米糠中のプログルテリンを濃縮するため、2~4倍に加水し、セルラーゼ、アミラーゼ系の酵素剤で酵素処理を行った。残渣を凍結乾燥し、試料を調整した。通常のタンパク組成を示す食用米の「つがるロマン」の糠や酒造好適米である「華吹雪」の酒粕も同様に処理した。酵素処理により酒粕、米糠のタンパク質は1.5~1.8倍に濃縮された。これらの試料のタンパク組成を電気泳動により解析したところ、酒造好適米「華さやか」を使用した試料は、57kDaのプログルテリンが特徴的に含まれていた。酵素処理試料を用いてin vitroでのコレステロール吸着性や胆汁酸吸着性を測定したところ、「華さやか」酒粕でやや吸着が高い傾向を示したが、胆汁酸の吸着性では処理による効果や米の品種による差はなかった。そこで抗肥満作用について、動物実験にて評価した。3週齢オスの肥満糖尿病モデルマウス(KK-Ay)を1週間予備飼育の後、コントロール群、華さやか酒粕、米糠酵素処理群、対照群としてプログルテリンを含まない米である華吹雪の酒粕酵素処理群、及びつがるロマンの米糠酵素処理群の計5群で実験をおこなった。それぞれの粉末を飼料重量の10%を置換し、カロリーは各群他の成分を調節し当量の飼料とした。4週間の実験飼育の後、解剖をおこない血液成分、臓器重量の測定をおこなった。その結果、体重に各群に変化は認められなかったが、臓器重量では華さやか酒粕酵素処理群の腸間膜白色脂肪組織重量がコントロール群と比較し有意に低下した。血液成分では酒粕及び米糠酵素処理群ではコントロール群と比較し、肝臓の炎症の指標であるGPT値が低下傾向を示した。以上の結果からプロラミン、更にプログルテリンを含む米タンパク質は内臓脂肪の蓄積抑制や肝臓の炎症を抑える効果を示すことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
電気泳動試料のタンパク抽出条件の検討に時間がかかり、目的とする個々のタンパク質の抽出方法を確立できなかった。しかし、米タンパクのプログルテリンはコレステロールに特異的な吸着性があること、清酒醸造中に酵素分解を受け難いが、人工消化試験では消化されていること、マウスによる実験では、肝機能や脂質代謝改善効果が期待されるなどプログルテリンの生体内機能が徐々に明らかにされている。
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Strategy for Future Research Activity |
プログルテリンを多く含む華さやか米とレジスタントプロテインであるプロラミンを多く含む春陽米を原料として、抽出溶媒(水、酸、アルカリ、有機溶媒等)による抽出挙動調査し、塩析等により、難消化性タンパク質プロラミン試料とプログルテリン試料を調整する。これらの試料を用いて消化性、脂質吸着性の検証を行うとともに動物実験を行う。 このことより、プロラミンとプログルテリンの比較とそれぞれの機能性を明らかにする。
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Causes of Carryover |
実験補助員の人件費を予定していたが、内部研究事業の方で予定していなかった補助員を雇用できたため、当該事業の実験作業の方に予想以上に従事できた。そのため、若干、実験は遅れたものの、補助員を雇用せずに対応した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
マイクロチップ電気泳動によるタンパク質組成のチェックを適時行う必要が生じたため、使用期限のあるキット試薬や透析膜の購入費に充当する。また、やや遅れた実験を進めるための実験補助員の人件費に使用する。
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