2016 Fiscal Year Research-status Report
糖光学分割のための新規キラル場の構築とL-糖の探索
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15K07458
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
小玉 修嗣 東海大学, 理学部, 教授 (70360807)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
多賀 淳 近畿大学, 薬学部, 准教授 (20247951)
會澤 宣一 富山大学, 大学院理工学研究部(工学), 教授 (60231099)
山本 敦 中部大学, 応用生物学部, 教授 (60360806)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 単糖 / 光学異性体 / 逆相HPLC / 誘導体化 / ジアステレオマー |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度において、3種類の六単糖(グルコース、マンノースおよびガラクトース)と3種類の五単糖(キシロース、リボースおよびアラビノース)の光学異性体12種類を一斉に分析できる高速液体クロマトグラフィー(HPLC法)を開発した。本年度は4種類の野菜(コマツナ、ホウレンソウ、カブ、カラシナ)の葉を用いて、L-糖の分析を行った。
1) 試料の前処理法の検討:4種類の野菜の葉に精製水を加えてホモジナイズし、遠心分離により糖類を含む上清を得た。この上清には様々な成分を含まれ、このままではHPLC法 で分析できないため、3種類のカートリッジ(疎水性成分を除去するためのC18カート リッジ、陽イオン成分を除去するための陽イオン交換カートリッジ、および陰イオンを除去するための陰イオン交換カートリッジ)を接続し、上清を流して吸着しない素通り画分を集めた。しかし、この素通り画分にはD-グルコースが大部分を占めており、他の糖類の分析を妨害することが分かった。そこで、今回はガラクトースに焦点を絞り、素通り画分を糖分析用カラムを用いたHPLC法によりガラクトースを含む画分を得た。この画分を塩基性下、トリプトファンアミドで処理して上記の糖光学異性体HPLC分析に供した。その結果、ホウレンソウ、カブおよびカラシナではD-ガラクトースのピークだけが検出されたのに対し、コマツナではD-ガラクトースに加えてL-ガラクトースに相当する位置に小さなピークが観察された。
2) 新規な単糖光学異性体分析用カラムの開発:単糖を結合させた樹脂を合成し、HPLC分析用カラムを作製した。この方法の原理は、カラムに結合した単糖と移動相中のホウ酸と試料中の単糖による三元複合体を形成させることである。しかし、試料に用いた単糖の保持時間が短すぎて光学異性体分離は達成されなかった。現在、樹脂への単糖結合量を増やすなどの検討を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究により、検討した4種類の野菜のうち、コマツナにL-ガラクトースが存在する可能性が出てきた。 1) 当初、コマツナを含め数種の市販の野菜を用いて検討していたが、L-ガラクトースは検出できなかった。L-ガラクトースはビタミンC合成経路の中間体であり、収穫後、時間とともに減少していく可能性が考えられた。そこで、農家の協力を得て収穫後すぐに加熱処理して酵素を失活させてから抽出処理を行った。 2) 抽出後の前処理は簡便なほど良い。糖類以外の妨害物質は3種類のカートリッジを通すことにより除去できたが、D-グルコース含量があまりに多く、他の単糖類の誘導体化効率が減少し、分析できない可能性が考えられた。本来は、一斉に多種類の単糖を光学異性体分析する予定であったが、糖分析用カラムを用いて、単糖を個別に光学異性体分析する方法に切り替えた。今回は、L-ガラクトースに焦点を絞り、コマツナにL-ガラクトースが含まれる可能性のあることを見いだした。 3) 従来の単糖およびそれら光学異性体の分析法とは異なるメカニズムをもつHPLC用カラムの開発を検討した。今回は保持時間が短く、単糖光学異性体を分離できなかったが、カラム開発の今後の方向性が明らかになった。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の目的は植物や食品中にL-体の糖類が存在するか否かを明らかにすることである。 1) 本年度の研究により、コマツナからL-ガラクトースに相当する保持時間にピークが検出された。これまでの研究では、L-ガラクトースが植物や食品から検出されたという報告はない。また、L-ガラクトースがビタミンCの中間体であることが報告されているが、L-ガラクトースを直接分析した報告は未だない。このため、検出されたピークが本当にL-ガラクトースであることを同定する必要がある。今後、L-ガラクトースに相当する画分を集めて、 質量分析を行い、六単糖であるか否かを確認する。さらに、キラルシフト試薬を用いたNMRスペクトル解析を行い、L-ガラクトースか否かを明らかにする。 2) 本年度はガラクトースを対象としたが、さらに、マンノースを含む他の糖類についても糖分析用カラムで分画して、L-糖が存在するか否かを検討する。L-糖のピークが検出された場合、ガラクトースと同様、質量分析およびNMRスペクトル解析により同定を行う。 3) 単糖光学異性体分析用カラムの開発を継続し、カラムに結合させる単糖の量を増やした樹脂を合成して単糖類を十分に保持可能なカラムを作製する。また、分離条件なども合せて検討する。
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Causes of Carryover |
昨年度確立した単糖類の光学異性体分析法を用いて、今年度は野菜中のL-体の単糖類の分析を網羅的に行う予定であった。野菜抽出液から不純物を除去した試料溶液にはD-グルコース含有量が非常に高く、単糖類をL-トリプトファンアミドで誘導体化してジアステレオマーを形成させる方法を用いているため、量的に少ない他の単糖類では十分な分析感度が得られないことが分かった。D-グルコースと他の単糖類とを分離する方法の検討に研究時間を要したため、4種類の野菜中を用いてL-ガラクトースだけに焦点を絞った。このため、試薬や器具類などの物品費が予定額より少なくなった。結果的には、L-ガラクトースと推定されるピークが検出されることにつながった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度は4種類の野菜を用いて、L-ガラクトースに焦点を絞った研究を行った。今年度確立したD-グルコースと他の単糖類との分離法を用いて、次年度はより多くの単糖類を対象にL-糖が存在するか否かを検討する。さらに、対象試料である植物や食品の種類も広げて集中的に分析する。実試料を分析するには分析を妨害する不純物を除去する前処理操作が必要となり、この操作には試薬や器具類(主に前処理カートリッジ)などを要する。今年度は4種類の野菜を用いた検討であったが、今年度予定していた物品費も合せて使用し、次年度はより多くの実試料を分析することとした。
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Research Products
(2 results)