2015 Fiscal Year Research-status Report
日本全国の樹木の展葉・落葉フェノロジーの予測モデルの開発
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15K07465
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
長田 典之 北海道大学, 北方生物圏フィールド科学センター, 特任助教 (80400307)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
日浦 勉 北海道大学, 北方生物圏フィールド科学センター, 教授 (70250496)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | フェノロジー / 開芽 / 森林 / ブナ / 温暖化 |
Outline of Annual Research Achievements |
気候変動は、植物の展葉・落葉時期(フェノロジー)の変化を通して植物の生産性に大きな影響を与えると予想される。温暖化の影響は高緯度ほど大きいと予想されており、日本のように南北に広がる地域では、南部と北部で気候変動の規模が異なる可能性が高い。このため、同一樹種でも分布域の南部と北部において同じ環境要因でフェノロジーが決まっているのか、また、もし差が見られるのであれば、それが遺伝的に固定されているのか表現型可塑性なのかを明らかにすることは、その種の気候変動への応答を予測する上で非常に重要である。本研究では、北海道大学苫小牧研究林において、主要樹種29種の展葉フェノロジーを調査するとともに、北海道大学和歌山研究林・高知大学嶺北フィールド・九州大学福岡演習林・宮崎演習林・宮崎大学田野フィールド・琉球大学与那フィールドに定点カメラを設置して、主要樹種の展葉フェノロジーを調べた。さらに苫小牧研究林において、矢部(熊本、北緯32.6度)から白井川(北海道、北緯42.8度)までの異なる11サイトの産地由来のブナの展葉フェノロジーを調べ、各地でおこなわれたブナの展葉フェノロジーの既存データと合わせることで、気象条件との関係を整理した。 この結果、同じ由来でも北の生育地ほど開芽時期が遅く、同じ生育地では北由来のブナほど開芽時期が早い傾向が見られた。また、北の生育地ほど由来間の開芽時期の差が小さくなった。さらに、同じ由来でも開芽時期と有効積算温度(2月1日以降、>5度)の関係は一定ではなく、年平均気温10度以下の生育地ではほぼ一定の有効積算温度で開芽していたものの、それより南では有効積算温度がより大きくなった。低温頻度と有効積算温度の関係をみると、低温頻度が同じときには北由来の個体ほど有効積算温度が低くなる傾向が見られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画通りに全国の展葉フェノロジーのデータを蓄積しつつある。さらに、ブナの展葉フェノロジーについては遺伝子型によって気象条件と展葉時期との関係が異なることが明らかになってきたため。
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Strategy for Future Research Activity |
定点カメラを用いてフェノロジーを観察する地点を増やし、データを蓄積するとともに、全国レベルでの気象条件と展葉時期の関係を詳細に解析していく。
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Causes of Carryover |
物品として購入予定だった顕微鏡を用いた解析(人件費を含む)を翌年に変更したため。また、出張旅費が節約できたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度に定点カメラ設置のための出張を増やすとともに、顕微鏡を購入して解析をすすめる予定。
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Research Products
(1 results)