2016 Fiscal Year Research-status Report
食葉性昆虫の大規模食害による失葉に対する樹木の応答ー成長と木質形成への影響ー
Project/Area Number |
15K07466
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
渡邊 陽子 北海道大学, 農学研究院, 研究員 (30532452)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大野 泰之 地方独立行政法人北海道立総合研究機構, 森林研究本部林業試験場, 主査 (30414246)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 木質形成 / 失葉 / 細胞壁 / カラマツ / ウダイカンバ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、食葉性昆虫の大規模食害により成長期に失葉した樹木の応答について、特に木質形成への影響を解明することを目的としている。北海道では、有用樹種であるカラマツとウダイカンバで食葉性昆虫の大発生による失葉が頻発していることから、食害履歴の明らかなカラマツおよびウダイカンバを用いた。それぞれの幹の胸高部から成長錐でコアを採取し、食害年に形成された年輪を確認した後、実験を行った。初年度は光学顕微鏡を用いて組織構造の観察を行い、カラマツの場合、食害年に形成された年輪で晩材仮道管の細胞壁が影響を受けること、食害時期によって年輪内での影響を受ける部位が異なることが明らかとなった。しかしながら、光学顕微鏡観察では細胞壁のどの層が失葉の影響を受けているのか観察できない。そこで本年度は、カラマツの食害年に形成された年輪の細胞壁について透過型電子顕微鏡により観察を行った。その結果、主に晩材仮道管の細胞壁二次壁が失葉の影響を受けていることが明らかとなった、つまり、S2層が極端に薄いタイプ、S1層が厚くS2層が薄いタイプ、S2層の途中から染色性が変化するタイプが存在することが明らかとなった。また、S3層が確認されない仮道管壁も多く観察された。このことから、成長期の失葉は、細胞壁のミクロフィブリル堆積とリグニン堆積に影響を与えることが示唆された。S2層は細胞壁の大部分を占め材質に影響を及ぼすことから、失葉によるS2層の変化は材質に多少なりとも影響を与えうると考えられる。 さらに、失葉による光合成能の変化や光合成産物の流れの変化などを解明するために、苗木を用いて摘葉実験を行う予定である。本年度はカラマツ及びウダイカンバの稚樹をポットに植栽し、来年度の摘葉実験に向けて生育中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
組織構造の観察では、透過型電子顕微鏡観察のための試料作成に時間がかかり、観察を終えることが出来なかった。 摘葉実験については、当初の計画では摘葉処理を本年度に行う予定であったが、植え替えの影響を避けるために、本年度に一年間生育させた後、来年度に摘葉処理を行うこととした。
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Strategy for Future Research Activity |
カラマツおよびウダイカンバの二次木部の組織構造観察を引き続き行い、成長期の失葉がおよぼす組織構造への影響を解明する。また、実験苗畑で生育させているカラマツおよびウダイカンバの稚樹について6~7月と8月に摘葉実験を行い、各樹種の光合成能および光合成産物の利用に対する失葉の影響や、失葉時期の違いが材形成へ及ぼす影響を解明する。
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Causes of Carryover |
本年度実施予定の摘葉実験を来年度に延期したため、人件費・謝金の経費が少額となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
来年度は摘葉実験を行うため、人件費・謝金の経費として利用する。また、国際学会に出席し、成果を発表する予定である。
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