2015 Fiscal Year Research-status Report
樹木防御反応の誘導・調節に対する細胞間シグナル物質の機能解明
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15K07470
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
楠本 大 東京大学, 農学生命科学研究科, 講師 (80540608)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
謝 肖男 宇都宮大学, バイオサイエンス教育研究センター, 助教 (30610323)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 防御反応 / シグナル / 活性酸素 / 傷害周皮 / 二次師部 / 樹木 |
Outline of Annual Research Achievements |
植物の防御反応を誘導するシグナル物質としてサリチル酸・ジャスモン酸・エチレン・活性酸素種等が知られている。しかし、樹木の防御反応に伴う二次代謝や組織構造の変化に対する影響は明らかにされていない。本申請課題では、これらのシグナル物質が樹木の樹皮や材の防御反応に対してどのように機能するのか明らかにすることを目的としている。 本年度は、ヒノキ二次師部の負傷部における褐変と傷害周皮形成に対してシグナル物質がどのように機能するか実験を行った。ヒノキの二次師部は傷がつくと数十分後には褐色に変色する。この変色と活性酸素種の発生との関係について調査した。傷をつけた二次師部の徒手切片を過酸化水素を検出するTMB-ペルオキシダーゼ溶液で染色すると、褐変を起こしている部分が青色に染色された。また、切り枝を過酸化水素水に浸け、傷口に過酸化水素水を浸透させると、褐変の範囲はより深部まで拡大した。これらのことから、二次師部の褐変は傷害を受けた時に発生する過酸化水素に起因している可能性が示唆された。次に、傷害周皮形成が二次師部の褐変部と健全部との境界付近で起こることから、活性酸素種による褐変と傷害周皮形成位置との関係について調査した。その結果、過酸化水素処理によって変色範囲を変化させることによって、傷害周皮の形成位置も変化することが分かった。このことから、傷害周皮形成の誘導には活性酸素種の生成が関与している可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
樹木組織内における活性酸素種の染色や定量を行うための最適なプロトコールの作成に成功した。シグナル物質のLC-MS/MS分析の条件検討も概ね上手くいっているが、夾雑物との分離方法については今後も検討の必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
シグナル物質の抽出・定量のための手法は概ね完成してきているので、実際に傷害時に発生するシグナル物質の時間的・空間的変化を明らかにするとともに、二次師部や二次木部で起こる個々の防御反応についてそれらの影響を明らかにしていく。
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Causes of Carryover |
本年度は測定手法を確立することに注力したので、限られたサンプル数で実験を行った。そのため、消耗品を多量に消費することがなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今後の実験をハイスループットで行っていくためiMarkマイクロプレートリーダー(BIO-RAD)を購入する。その他は当初計画通りに使用していく。
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