2015 Fiscal Year Research-status Report
上層木の管理は植生の被食耐性を高めるか?資源分配理論からの検証
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15K07471
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
鈴木 牧 東京大学, 新領域創成科学研究科, 准教授 (40396817)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松木 佐和子 岩手大学, 農学部, 講師 (40443981) [Withdrawn]
楠本 大 東京大学, 農学生命科学研究科, 講師 (80540608)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 防御と成長のトレードオフ / 森林生態系の弾力性 |
Outline of Annual Research Achievements |
東京大学千葉演習林(房総半島)の薪炭二次林に設定した野外実験区において植生調査を実施した。その結果,上層木管理区(過密化した上層木を伐採した区画)では防鹿柵の内外で顕著な植生の差がみられた。即ち,上層木管理区の防鹿柵外における出現種の組成は,上層木管理区の防鹿柵内の群集と包含関係にあり,防鹿柵外での優占種は防鹿柵内では非優占種となっていた。一方,上層木伐採を行わなかった非管理区では,防鹿柵内外で植生の差は検出されなかった。これらの結果はいずれも,資源制約説すなわち採食防御と競争能力のトレードオフと,競争排除機構に基づく本研究の仮説を支持していたことから,研究計画に記した課題1の目的が達成された。 前段の植生調査データに基づき,明暗・防鹿柵内外の各条件下で特異的に出現した植物種群と,実験条件によらず出現した植物種群のうち,十分な個体数が得られそうな種群を,研究課題2・3の研究対象種として選定した。翌年度に行う調査分析の予備段階として,上で決定した対象種群から予備的に少量のサンプルを採取し,葉の防御物質濃度(縮合タンニン量,総フェノール量)の分析と,腺毛密度の計測を試行的に実施した。この課程で,サンプル下処理段階での保存や粉砕の技術的課題を抽出,解決し,来年度以降のため測定手順を確立した。なお,化学分析の試行結果は仮説を部分的に支持しており,上層木管理区の防鹿柵内外の葉において,一部の化学的防御物質の含有量が異なる傾向がみられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
房総半島での調査は予定通りに進行しているが,丹沢山地で実施を予定していた植生調査を,天候条件とスケジュールの都合で昨年度内に完了できなかった。丹沢での植生調査は今年度実施し,併せて防御形質と成長速度の測定を実施予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
予定通り調査対象種の成長,光合成,防御形質の測定を遂行し,所期の仮説を検証する。また,遅れている丹沢山地での植生調査を実施し,すでに実施した植生調査データと合わせて分析結果をとりまとめ,学術誌に発表する。
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Causes of Carryover |
分担者の変更に伴い,元々予定していた高額消耗品(粉砕機)の購入が必要なくなった。しかし,この差額を翌年度に別の調査用具(葉緑素計)と薬剤の購入費用に充てる必要が生じたため,繰り越した。 また,丹沢山地において予定していた調査が天候およびスケジュールの関係で翌年度に延期となったため,調査旅費を翌年度に繰り越した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当初計画の次年度予算に,物品費として15万円,調査旅費として8万円,分析用薬剤の購入費用として15万円を追加する。 物品費の詳細であるが,光合成速度の測定装置が代表者の組織から配置換えとなり使用できなくなったので,代替として15万円のSPADメータ(葉緑素計)を代表者が購入する予定である。
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