2016 Fiscal Year Research-status Report
リグニン分解菌の多様性と機能に注目した本邦亜熱帯林の土壌分解系に関する研究
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15K07480
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
大園 享司 同志社大学, 理工学部, 教授 (90335307)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 森林 / 菌類 / 落葉分解 / 生物多様性 / 物質循環 / 亜熱帯林 |
Outline of Annual Research Achievements |
森林の土壌分解系は、落葉や落枝といった生物遺体の分解を通じて、栄養塩の循環や土壌有機物の生成に深く関わっている。このため、森林生態系の物質循環や森林動態を理解する上で、物質生産や食物連鎖といった、地上部における生態系プロセスのみならず、地下部の土壌分解系の構造や機能に関する理解が重要だが、特に亜熱帯林におけるデータが少ない。本研究課題では、本邦亜熱帯林における落葉分解のプロセスを明らかにすることを目的として、沖縄本島北部の亜熱帯常緑広葉樹林においてリグニン分解にともなって発生する落葉の漂白(白色化)についての野外調査を実施した。スダジイ、イジュ、イスノキ、タブノキ、ヤブツバキ、カクレミノの6樹種について、分解にともなう漂白部の消長をリターバッグ法により追跡調査した。その結果、落葉の漂白部は分解開始から9ヶ月目にかけて増加傾向にあり、漂白部の面積割合は平均で、スダジイで落葉面積の41%に、タブノキでは35%に、それぞれ達した。その後、漂白面積率は減少傾向に転じることが明らかとなった。漂白部では、葉面積あたり葉重量とリグニン濃度(重量%)が低く、セルロースと全窒素の各濃度(重量%)が高かった。葉面積あたり窒素量は、漂白を受けていない非漂白部に比べて漂白部で低かったことから、リグニン分解菌の定着にともなう落葉の漂白により窒素の無機化が促進されていることと、リグニン分解菌の定着が、個葉レベルでの落葉分解の異質性を生み出していることが示された。これらの調査と並行して日本各地の照葉樹林での漂白落葉の採取を実施しており、次年度も継続する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究はおおむね当初の計画通り進行している。沖縄本島北部での落葉分解実験と、各地の照葉樹林でのサンプリングは順調に進んでおり、平成29年度に向けて継続していく。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は、当初の計画通り、落葉分解実験を完了し、分解のプロセスとリグニン分解菌の機能についてデータを取りまとめる予定である。また、沖縄本島北部の調査地を含む、南西諸島(西表島~奄美大島)の亜熱帯林から、九州・四国・中国・近畿・伊豆地域・関東および佐渡の照葉樹林に至る20程度の地点において、シイ類(主にスダジイ、一部でツブラジイを含む)の落葉を採取し、漂白部からの菌類の分離を進めている。平成29年度は、これらの野外調査を継続するとともに、他の研究者に採取を依頼することで効率的に遂行していく予定である。
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Causes of Carryover |
他の研究者の協力により、当初の予定より野外調査のための旅費を削減することができた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度には備品の購入および人件費、旅費などとして執行し、研究をさらに効率的に進める計画である。
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Research Products
(11 results)