2015 Fiscal Year Research-status Report
樹木種の浸透性交雑を通した適応的遺伝子の獲得プロセスの解明
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15K07489
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Research Institution | Forestry and Forest Products Research Institute |
Principal Investigator |
内山 憲太郎 国立研究開発法人 森林総合研究所, 森林遺伝研究領域, 任期付研究員 (40501937)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
津山 幾太郎 国立研究開発法人 森林総合研究所, 北海道支所 森林育成研究グループ, 主任研究員 (80725648)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 浸透交雑 / モミ属 / 潜在生育域 / ゲノムワイドSNP / Rad-seq |
Outline of Annual Research Achievements |
浸透交雑や種間交雑は、種の分化や多様化に大きく寄与していると考えられる。モミ属は世界各地で種間交雑の報告があり、日本のシラビソとウラジロモミ間においても、自然交雑が報告されている。本州以南に分布するモミ属4種のうち、系統の遠いオオシラビソを除いたモミ、ウラジロモミ、シラビソの3種、計42集団について遺伝解析を行った。核DNAの解析の結果、3種は明瞭に遺伝的に分化していた一方で、ミトコンドリアDNAにおいては、それぞれの種の分布の端の集団のハプロタイプが他種の主要なハプロタイプへと置き換わっていた。それらの集団では、核DNAのネットワーク解析においても他種に近い枝に位置し、過去に交雑が起こった可能性が示唆された。 気候変動等にともなう分布拡大時には、近縁種との種間交雑が起こりやすいとされる。そこで、3種の潜在生育域を一般化加法モデルにより推定した。説明変数には最寒月の最低気温、暖候期の平均気温、降水量、寒候期の降水量を用いた。それぞれの種の現在と最終氷期最盛期(LGM)における潜在生育域の推定とその重なりの程度(LGMから現在までの分布の移動距離)を推定したところ、潜在生育域の水平方向への移動距離が大きい種ほど、種の遺伝的多様性が低い傾向が認められた。また、浸透交雑の痕跡のある集団は、潜在生育域の解析においても種間の分布が重なる地域に位置し、これらの地域において過去に分布が重複していた可能性が示された。 浸透交雑の程度をゲノムワイドに評価するために、制限酵素断片配列の網羅的解析を行った。まず、最適な制限酵素組み合わせを決定するため、モミ2個体を用いて実験を行い、500~4000座程度で多型を検出した。そのうち最も成績の良かった制限酵素組み合わせを用いて、過去に浸透交雑を起こしたと予想される分布の端の集団ならびに純粋な集団の計10集団において制限酵素断片配列の網羅的解析を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
3種の分布予測モデルの構築、ならびに浸透交雑の程度を推定するためのRad-seqの適用ともに予定通り進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
過去に浸透交雑を起こした痕跡のある集団の解析に加え、現在交雑を起こしている集団の解析を加え、ゲノムの混ざり具合ならびに遺伝子の取り込みの過程を明らかにしていく予定である。また、分布予測モデルでは、気候シナリオを用いた解析だけでなく、cryptic refugiaのあぶり出しを念頭に入れた、「地形の複雑さ」も変数に加えた解析に着手する。
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Causes of Carryover |
DNA実験補助の謝金について、実験を次年度に延期したため。また、委託で行う予定にしていた次世代シークエンス解析の一部について、研究所所有のシークエンサーで代替したため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度に予定している次世代シークエンス解析の前処理の実験補助による謝金ならびに次世代シークエンス解析の委託費に使用する。
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