2016 Fiscal Year Research-status Report
逆境を糧にする外来樹木の「切ったら増える」生理的プロセスの解明
Project/Area Number |
15K07493
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Research Institution | Forestry and Forest Products Research Institute |
Principal Investigator |
山下 直子 国立研究開発法人森林総合研究所, 関西支所, 主任研究員 (70353901)
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Project Period (FY) |
2015-10-21 – 2018-03-31
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Keywords | 外来種 / 萌芽 / 侵略性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本来は外来種を抑制することを目的とした人為的管理によって、実際は外来種の成長や繁殖力が高まり、かえって分布域が拡大している可能性があるが、人為が具体的にどのようなメカニズムで外来種に有利に作用しているのかは明らかにされていない。本研究では、外来樹木トウネズミモチをモデルとして、「人為的攪乱が外来種の侵略性を増大させる」という仮説を、攪乱後の適応度と生理的回復過程の解明によって検証することを目的としている。滋賀県大津市の里山林に分布する個体群について調査した結果、トウネズミモチは、林縁から林内にかけて光環境に左右されずその出現が確認された。また、林縁環境においては陽樹である在来種アカメガシワより、樹高成長や最大光合成速度が上回ることはなく、強光下で繁茂していく可能性は低いと思われた。しかし、林内環境においてヒサカキと耐陰性は変わらないことが示唆されたため、弱光下での生存および強光下で陽樹からの被圧にも耐えられることが推測される。 里山林や都市近郊林では環境整備のための樹木の伐採が定期的に行われており、トウネズミモチのシュートには光環境に関係なく、伐採跡が確認された。そのような伐採後のトウネズミモチの萌芽力は、季節に関わらず高く、特に林縁におけるアカメガシワとの比較では、トウネズミモチは陽樹と変わらない生理的特性を示し、形態的にはアカメガシワよりも旺盛な伸長を示し、強光下でアカメガシワを被圧する可能性が示唆された。トウネズミモチと同所的に存在する競合在来種のアカメガシワ、ヒサカキ、ネズミモチの各器官のデンプン量を分析したところ、枝、根のデンプン含量はトウネズミモチのほうが在来種よりも高い傾向であり、光合成産物をいち早く貯蔵器官に分配していることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本課題は、平成27年10月採択のため、当初27年度に予定していた研究内容の一部を28年度から開始しておこなっている。そのため、フィールド調査や分析がまだ途中段階であるが、解析は順調にすすんでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
外来樹木トウネズミモチと競合在来種について、地上部、地下部の各器官における光合成産物(デンプン、糖)の貯蔵量を分析し、刈り払い後の萌芽性との関連性について検討する。これまでの研究成果から、人為的な刈り払いによって外来種が増える生理的メカニズムについて論文にまとめる。
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Causes of Carryover |
本課題は平成27年10月採択であり、当初27年度に予定していた実験内容を次年度以降にずれ込んで実施している。実験補助、データ入力に人件費を必要とし、これらの作業を翌年も継続しておこなうため、次年度繰り越しが必要となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
29年度は、当初計画で28年度に予定していた実験の一部と29年度の実験と解析の両方をおこなうため、繰越金の多くは、研究補助の賃金にあてる予定である。
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