2015 Fiscal Year Research-status Report
窒素付加はスギの成長・繁殖に是か非か?-炭素/窒素供給バランスからの検証
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15K07495
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Research Institution | Forestry and Forest Products Research Institute |
Principal Investigator |
壁谷 大介 国立研究開発法人 森林総合研究所, 植物生態研究領域, 主任研究員 (30353650)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 窒素負荷 / 貯蔵炭水化物 / 栄養条件 / 成長 / 繁殖 / スギ / 人工林 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、現時点でスギの成長・繁殖が窒素飽和かどうかを解明し、今後想定される窒素付加量の変動がスギの成長・繁殖に与える影響を定量的に評価することを目的としている。そのために茨城県内の窒素負荷量の異なるスギ3林分において、対象とするスギの個体成長・繁殖量および炭水化物貯蔵量を同時比較を行う。同時に操作実験として異なる窒素施肥条件でスギ苗を栽培し、窒素条件で規定される貯蔵炭水化物のレンジを解明する。これらの結果を統合して、都市近郊林のスギが現時点で窒素飽和であるかどうかを評価する。 本年度は、野外調査として先行研究で窒素負荷量が異なることが明らかにされている茨城県内の3つの林分において、固定試験地を設定した。毎木調査の結果、各林分の立木密度はそれぞれ、椚平国有林(窒素負荷高):1233本・ha-1、天岳良国有林(負荷中):356本・ha-1、北山国有林(負荷低):889本・ha-1(うち、スギは600本・ha-1)であった。これら各固定試験地において供試木(各5本)を選定し、2016年2月より樹冠上部の枝条のサンプリングを開始した。また各林分において、リタートラップを用いた葉・繁殖器官リターの回収およびデンドロメータを用いた肥大成長量の精密追跡を開始した。 同時に栽培実験として、試験で用いるスギ苗の栽培を開始した。スギ種子は発芽時期のばらつきが1~2ヶ月程度と大きかったため、5月末の播種から9月初頭まではセル・トレイで栽培した後、マルチキャビティ・コンテナに移植したうえで、ビニルハウス内にて3つの栄養条件で栽培を開始した。栽培苗は順調に生育しており、次年度の試験に利用予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
樹冠にアクセスするための一本梯子の調達に予想外に手間取り、試験地設定・毎木調査および枝条の採集開始が年度終盤になってしまった。ただし野外調査は、複数年にわたる継続調査を当初から予定しており、課題全体での進捗は問題ないと思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、当初の予定通り課題終了時まで各林分の固定試験地において、枝条サンプルの定期採取を行い、枝・葉内の貯蔵炭水化物濃度・窒素濃度を定量すると共に、個体の成長量・繁殖量を定量化し窒素負荷量の異なる林分間で比較する。同時に次年度中に異なる栄養条件で栽培したスギ苗の貯蔵炭水化物濃度を定期的に定量し、生育栄養条件の違いによる炭水化物貯蔵レンジを解明する。上記の結果を統合して、都市近郊林のスギが現時点で窒素飽和であるかどうかを評価する。
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Causes of Carryover |
野外調査開始の遅延のため、野外調査回数が減少したこと、および当初予定していた実験補助(サンプル処理)のための人件費が年度内に発生しなかったことが主な要因である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度以降は、概ね予定通りの研究の遂行が可能であると思われるため、当初の計画に沿った予算の使用を進める。その上で予算の不足が生じた場合には、次年度使用額からの支出を検討する。最終年度時点での余剰金は、返納する。
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