2017 Fiscal Year Research-status Report
伐採前のササ抑制とヒノキの前生稚樹による確実な天然更新
Project/Area Number |
15K07498
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Research Institution | Forest Research and Management Organization |
Principal Investigator |
齋藤 智之 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員等 (00414483)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
酒井 武 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (80353697)
壁谷 大介 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (30353650)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 前更更新法 / 下刈り / 操作実験 / チマキザサ |
Outline of Annual Research Achievements |
木曽地方ではヒノキ林を天然更新施業により仕立てる確実な手法の開発が急務である。現在、主に実施されている後更更新法による施業方法では、伐採後直ちに繁茂するササの抑制が間に合わず、ヒノキの更新が阻害されて、上手く進んでいない。そこで林冠下においてササの抑制実験を行って、ヒノキの実生バンクが形成されるかどうかを検証した。ササ抑制処理は刈払いと抑制剤散布の組合せ、さらに刈払い時期の違い2時期を組み込んだ全5処理とした。本年度は、林冠下においてササ抑制処理による操作実験の2年目の成果が得られた。結果は、ササの抑制処理に対してササの現存量の処理間差が顕著であった。特に刈払い処理においては、刈払い3処理区の方法別に依らず、地上部を刈り払った後の再生地上部現存量が2年連続ほぼゼロに近かった。また、地上部のみの処理にも関わらず地下部の現存量は刈払い3処理区において顕著に低下したことが分かった。一方、抑制剤散布のみによる効果は地上部でも地下部でも2年経過した時点で殆ど現存量低下が認められず、外見上地上部は処理を行わなかった対照区とほぼ変わらなかった。このことから抑制剤は林冠下で処理効果が表れるのに要する時間が非常に長いと予想された。処理間のヒノキ実生の発生状況は、前年の種子生産量が並作程度で、豊作ほどではないが全体として多数実生発生がみられた。ヒノキの更新サイトとして、ササ刈払い処理区が良好な結果となったのに加えて、さらにリターを除去することが重要な作業であると示唆される結果となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題は林冠下においてササの抑制操作実験を行って、ヒノキの実生バンクが形成されるかどうかを検証した。ササ抑制処理は刈払いと抑制剤散布の組合せ、さらに刈払い時期の違い2時期を組み込んだ全5処理とした。本年度は実験開始後2年目の年であり、主に林冠下におけるササの抑制処理に対するササ現存量の推移とヒノキの実生生残調査を実施した。作業内容としては計画どおりの進捗状況である。結果として処理の効果は、地上部においては刈払い処理3区には出ているが、抑制剤散布区では現存量の低下が想定より遅くなっている。地下部においては、見どころは地上部への処理が地下部に対してどこまで影響するかであるが、刈払い3処理区にかなり現れてきている。抑制剤散布区は概ね想定どおりの効果で、地下部現存量は対照区とほぼ変わらず、生存が維持されている。全体評価としては、ほぼ想定通りの進捗状況であり、次年度、最終年度の調査で予定どおりの結果に到達する見込みである。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は最終年度であるが、これまでほぼ想定どおりの成果が得られているため、大きな推進方策の転換は予定していない。本課題の評価はササ抑制処理によるササ現存量への効果の検証と、前更更新の要でありササの抑制効果の検証法の一つであるヒノキ実生の更新状況から示される。操作実験の効果は、メインはササの地上部・地下部の現存量測定による。得られる効果が微妙な場合は、ササの地下部に貯蔵されている炭素蓄積量および養分量の測定による結果を基にする予定である。ササ抑制処理における最終的な効果は初期現存量からの変化量により検討する。変化量が処理間で異なるため、課題最終年であっても各処理区の現存量を測定することが重要である。ヒノキの更新状況は実生の発生状況とその後の生残率および成長過程を毎年観察することによって明らかにされる。毎年の種子生産量、実生の発芽率は各林分・処理区に設置したシードトラップと実生調査枠によるデータから算定する。ヒノキの更新状況の成果もほぼ想定どおりの成果が得られており、各段階のデータはササの抑制処理により創出される環境に適応的な応答を示している。例えば、ヒノキ実生のササ被陰による更新阻害要素は、ササの刈払いにより最大限取り除かれ、ササの刈払い3処理区においてはヒノキの更新が良い状況となっている。
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Causes of Carryover |
理由:初年度から研究協力者や賃金を要しない調査補助員が得られたため、賃金支払いを予定していた金額が累計で予定より少なかった。また消耗品についても、研究協力機関(森林管理署等)からの調査用具の借り入れなどがあったため、使用額が計画よりも少なかった。これらの理由により次年度使用額が生じた。 使用計画:研究協力機関である森林管理署から調査補助員を出せる人数が減ってきたため、現地調査補助を別に雇う必要があり使用する。環境測定機器の現地データ収集用のノートパソコンが使用年限の消化と劣化により可能であれば交換したい。
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Research Products
(2 results)