2015 Fiscal Year Research-status Report
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15K07503
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
芦谷 竜矢 山形大学, 農学部, 教授 (20423486)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ロンギホレン / ツヨプセン / 自動酸化 / 抗議活性 / 抗菌活性 |
Outline of Annual Research Achievements |
27年度は,これまでの研究ですでに反応機構等を明らかにし,生成物の標品等を所持しているカリオフィレン,ロンギフォレン,ツヨプセンの自動酸化反応生成物についての更なる検討と,生理活性試験を行った。活性を有する誘導体を選択し,反応温度,時間等の反応条件を変化させて,特定成分が得られる条件を見出し,高収率合成法の検討を試みた。 本年度は特にロンギホレンの自動酸化生成物について,詳細に検討し,加熱反応を試みた結果,多種多様な反応生成物が得られた。その反応機構について,エポキシドを合成し,その加熱反応を検討したことでエポキシドを中間体とする自動酸化反応機構が推定できた。またそのエポキシドの自動酸化反応についてさらに検討することで,微量反応生成物の合成などを行うことができ,ロンギホレンのハイドロキシケトン誘導体が最も抗蟻活性が高い生成物であること,カルボン酸誘導体が抗菌活性が高いことなど,反応特性,生理活性評価について予想以上の知見を得ることができた。当初の計画では,生理活性試験の結果を基に,反応温度,時間等の反応条件を変化させて,特定成分が得られる条件を見出し,活性成分の高収率合成法の検討することとしていたが,ロンギホレンについてこれらの目的を達成することができ,新たな進展の可能性を期待することができた。ツヨプセン,カリオフィレンについても同様に実験を行い,生成物を得て検討した。カリオフィレンの加熱反応ではエポキサイドとそのエポキサイド環の開裂したアルコールが得られた。また,ツヨプセンについては,過酸化物の生成が見られたため,この生成物について検討する必要があることを見いだした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は,樹木成分の中でカリオフィレン,ロンギフォレン,ツヨプセンなど,これまでの研究で自動酸化反応が容易に進行することが知られている成分の反応を詳細に検討し,生成物の生理活性と活性生成物の簡易合成を行うことを目的に研究した。その結果,ロンギホレンについて,これまで明らかにした生成物以外に多様な生成物を単離同定し,生成物の抗蟻活性,抗菌活性を詳細に検討することができ,当初の目的以上の成果を得ることができた。カリオフィレンについても同様に反応の解析を行い,生成物の生物活性を検討したが,ロンギホレンのように自動酸化反応で多様な生成物は見られなかった。ツヨプセンについては多くの生成物を加熱による自動酸化反応で確認し,その生成物を単離し,生物活性を確認することができたが,ガスクロマトグラフィー(GC)分析の結果などから,過酸化物の生成が多量にあることが推察された。この確認と,高い生物活性が期待される過酸化物の単離,活性評価を次年度以降の課題の一つとして見いだすことができたため,当初の計画から概ね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
27年度の実験の継続として,ツヨプセンの過酸化物の確認とその単離,反応特性の検討,生理活性評価を行う。過酸化物の定量法についてはヨウ素を用いた滴定法などを検討し,単離法については既報を参考にアルミナカラムクロマトグラフィーを用いて行う予定である。 さらに当初の計画通り,スギ針葉の主成分であるヘディカリオールとδ-カジネンの酸素による自動酸化反応の反応の解析を行う。申請者は崇城大学の長濱静男名誉教授から譲渡された単離済みの針葉樹テルペン類を保有しており,それらを標品として積極的に活用して検討を行う。 具体的な実験方法は27年度の方法に準拠する。原料は,スギ,ヒノキ,マツの材,樹皮または針葉から抽出し,精製する(溶媒等購入)。得られた生成物を精製・単離し,NMR等(既存設備使用,溶媒等消耗品購入)のデータから構造を決定し,反応機構を詳細に検討する。
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Causes of Carryover |
消耗品のうち溶媒,薬品や生物活性測定用機器について,研究室でこれまでに購入していたものを使用でき,消耗品の購入が当初より小額であったためもあるが,ガラス機器などを工夫して使用したため新規購入を押さえることができた。また,旅費については,当初欧州の学会を予定していたが,比較的旅費のかからないハワイで開催の学会に参加し発表したため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
28年度は過酸化物の分析などこれまで使用していた機器と異なる装置,薬品,ガラス機器類を購入する。また,研究成果の発表のための学会参加費,サンプル採集の旅費が27年度よりも多くかかることが見込まれるため,消耗品と旅費に使用する。
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