2016 Fiscal Year Research-status Report
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15K07504
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Research Institution | Utsunomiya University |
Principal Investigator |
金野 尚武 宇都宮大学, 農学部, 准教授 (60549880)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | きのこ / 多糖 / グルカン / 糖質関連酵素 |
Outline of Annual Research Achievements |
きのこ類の細胞壁はβ-1,3-グルカン、およびβ-1,6-グルカンといった多糖から構成される。このうちβ-1,6-グルカンは真菌類に特有の多糖であり、人体に対し免疫調節作用などの生理機能を示すことが知られている。しかし、生物内では複雑な構造で存在し、精製が困難なため、その分子特性や生理機能の詳細は明らかにされていない。 H27年度に、きのこ類(スエヒロタケおよびウシグソヒトヨタケ)由来のβ-1,6-グルカナーゼの合成酵素への変換に成功し、フッ化ゲンチオビオースを用いて糖転移活性を行うことができた。そこでH28年度は、①糖鎖合成反応条件の最適化と、②得られた酵素反応生成物の分子量解析を行った。 糖鎖合成反応の最適化を行ったところ、反応溶液における基質濃度と酵素濃度を上げることで、より多くの生成物を得ることができた。一方、最適な反応温度は20℃程度であり、反応温度40℃以上では生成物が得られないことが判明した。生成物の収率をさらに上げる条件を見出す必要がある。活性中心残基をグリシンに変換した変異β-1,6グルカナーゼを作成し、合成酵素化することに成功しているが、アラニン、セリンに置換された変異酵素も作成し、さらに効率的に糖鎖合成できる酵素を取得することで、糖鎖合成反応の効率化と高収率化を目指す。 酵素反応生成物の分子量をMALDI-TOF MSにて解析した。5糖、6糖、7糖、8糖、9糖、10糖に相当するピークが得られた。このように、最長で10糖までの糖鎖(β-1,6-グルカン)を本酵素反応で合成可能であることが示された。 現在、マクロファージ様細胞を用いた、酵素合成生成物の生理機能評価を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
年次計画においてH28年度は、β-1,6グルカン合成酵素(変異β-1,6グルカナーゼ)を用いた糖鎖合成と、条件の最適化が課題であった。きのこ類(スエヒロタケおよびウシグソヒトヨタケ)由来の変異β-1,6グルカナーゼとフッ化ゲンチオビオースを用いて糖転移活性を行うことができた。さらには、生成物の分子量を解析することで、本酵素反応で多糖合成が可能であることを確認することができた。一方で、生成物を大量合成可能な条件が、現時点では見出せていないことが課題として挙げられる。
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Strategy for Future Research Activity |
糖質加水分解酵素の一部で、活性中心に存在する2つの酸性アミノ酸のうち、求核剤として働く側の変異体を作成することで合成酵素へ変換できることが報告されている。これまでに、活性中心残基をグリシンに変換した変異β-1,6グルカナーゼを作成し、合成酵素化することに成功しているが、アラニン、セリンに置換された変異酵素も作成し、さらに効率的に糖鎖合成できる酵素を取得する。
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Causes of Carryover |
β-1,6-グルカンの酵素合成に成功し、次年度の課題である生成物の構造評価および機能性評価を前倒しで行うために、H29年度の予算を前倒し請求した。実験系の確立に必要な消耗品を一部購入したが、酵素合成生成物の収率が低く、当初予定していたNMR解析等まで行うことができなかったため、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
現在、酵素反応生成物を、構造解析に必要な量が得られるよう、引き続き合成を進めている。必要量が得られ次第、構造解析に必要な消耗品類を購入する。
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Research Products
(7 results)