2015 Fiscal Year Research-status Report
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15K07520
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Research Institution | Forestry and Forest Products Research Institute |
Principal Investigator |
松永 正弘 国立研究開発法人 森林総合研究所, 木材改質研究領域, チーム長 (70353860)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石川 敦子 国立研究開発法人 森林総合研究所, 木材改質研究領域, チーム長 (00353574)
片岡 厚 国立研究開発法人 森林総合研究所, 木材改質研究領域, 室長 (80353639)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 超臨界二酸化炭素 / アセチル化 / 酢酸 / VOC / 寸法安定性 / 耐湿性 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、異なる処理方法でアセチル化された木材の性能評価試験と有機酸放散量測定試験を実施し、処理法の違いによる性能や放散量の差について検討を行った。アセチル化処理(120℃/8時間)は寸法が100mm (L) × 20mm (R) × 20mm (T) のスギ心材試片を超臨界二酸化炭素中、液相中、気相中のいずれかで実施し、流水中で1週間水洗した後、性能評価と放散量測定を行った。性能評価試験は、試片を8分割し、先端部分と中央部分の小片を複数の相対湿度で3週間以上調湿し、寸法安定性と耐湿性を測定した。有機酸放散量測定試験は、試片をスマートバッグに入れて2.0リットルの空気を注入し、40℃で15分間加熱して、スマートバッグ中の空気1.8リットルをDNPHカートリッジに吸着させた。そして、カートリッジを80℃で5時間加熱した後、5.0mlのアセトニトリルでカルボン酸のDNPH誘導体を溶出して、HPLCで分析した。性能評価試験の結果、試片先端部分の小片では超臨界法、液相法、気相法の3処理法ともほぼ同程度の寸法安定性と耐湿性を示したが、試片中央部分の小片では超臨界法が最も高い寸法安定性を示し、気相法は寸法安定性と耐湿性が特に低かった。このことから、超臨界法では試片内部まで均一にアセチル化されているのに対し、気相法ではアセチル化反応が試片の表層のみに集中していて、反応が不均一であることが示唆された。次に、有機酸放散量測定試験では、水洗後、10日後、30日後の酢酸放散量を測定した。その結果、3処理法ともほぼ同じ放散量で推移し、今回の測定期間内では放散量はほとんど変化しなかった。3処理法で製造されたアセチル化試片の質量増加率はいずれも約20%であり、アセチル化の均一さや寸法安定性等の性能に差があったとしても、質量増加率が同程度であれば酢酸放散量はほぼ同じになる可能性が高いことが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、高い浸透・拡散力を持つ超臨界二酸化炭素を用い、アセチル化木材から酢酸が放散するメカニズムを解明するとともに、放出される酢酸臭を低減させる最適処理条件を明らかにするとともに、木材のアセチル化から酢酸臭の除去まで、一連の処理を超臨界二酸化炭素中で行う方法を確立することを達成目標としている。今年度は、アセチル化木材から放散される酢酸等有機酸類の放散量測定方法を確立し、超臨界法及び従来法でアセチル化された木材から放散される酢酸の経時変化測定を実施した。また、酢酸の放散低減処理を施す前の各種性能を把握するため、寸法安定性や耐湿性の評価を実施した。このように、研究は当初の予定通りに進行しており、問題点は特にない。
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Strategy for Future Research Activity |
超臨界法及び従来法でアセチル化処理した木材試片について酢酸の放散量低減を試みる。処理方法としては、木材試片を反応容器に入れて超臨界二酸化炭素を充填し、密閉して一定時間保持する「バッチ式」と、背圧弁で装置全体の圧力を一定に保ちながら超臨界二酸化炭素を送液ポンプで反応容器内に一定量送り続ける「流通式」の2種類を実施し、それぞれの方法において、処理温度や圧力、時間、流通速度などの処理条件を様々に変化させ、各種処理条件で木材試片を抽出処理する。処理後、木材試片からの酢酸等有機酸類の放散量測定を行い、超臨界二酸化炭素が酢酸の放散メカニズムに及ぼす影響を検討するとともに、酢酸の放散量低減に最も効果的な処理条件の探索を行う。
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Causes of Carryover |
消耗品を定価で購入する計画を立てて予算の執行を行ったところ、納入価格との差額が生じ、結果として次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
アセチル化木材から放散される酢酸の捕集に必要なサンプリングバックや、サンプリングバックに回収された大気中に含まれる酢酸を吸着させる吸着カートリッジ、HPLC分析に必要な薬品類等消耗品類や、得られた成果を学会等で発表するための旅費、実験補助員の賃金などに使用する計画である。
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Research Products
(4 results)