2016 Fiscal Year Research-status Report
重量測定を行わずに木材の密度とヤング率を求めるための振動試験方法の開発
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15K07522
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Research Institution | Forestry and Forest Products Research Institute |
Principal Investigator |
久保島 吉貴 国立研究開発法人森林総合研究所, 木材加工・特性研究領域, 主任研究員 (40353669)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
園田 里見 富山県農林水産総合技術センター, 富山県農林水産総合技術センター木材研究所, 副主幹研究員 (80446640)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 重量測定 / 密度 / ヤング率 / 振動試験 |
Outline of Annual Research Achievements |
高含水率小試験体に対して質量付加振動法を適用し、密度およびヤング率の推定精度を検討した。高含水率状態にした、幅30mm、厚さ5mm、長さ300mmの試験体を天然乾燥させながら縦および曲げ振動試験を行い、質量付加振動法によって密度とヤング率を推定した。その結果、推定精度は、乾燥過程での試験体の重量減少により振動試験中に共振周波数が上昇することの影響を受けた。すなわち、試験体に集中質量を付着しない通常の方法で共振周波数を測定した後に集中質量を付着して共振周波数を測定すると、後者/前者の比が過大になり十分な推定精度が得られなかった。一方、集中質量あり、なしの順番で測定すると十分な推定精度が得られた。また、曲げ振動の方が縦振動よりも共振周波数の測定誤差の影響が小さく、推定精度が高いことが理論的および実験的に明らかとなった。次に、目視等級区分されたスギ柱材に質量付加振動法を適用しその実用性を検討した。その結果、集中質量を付着する木口面を仕上げない材では集中質量が大きい方が、木口面を仕上げた材では集中質量が小さい方がよりよい推定精度を示した。木口面を仕上げない材では、木口面が傾斜しかつ粗いためと考えられた。また、目視等級が上位の材は他の等級の材よりも誤差が小さかった。木口面の不斉により集中質量の付着箇所で減衰が生じ、共振周波数の低下によって推定値が減少した。木口面を仕上げない場合は、集中質量の付着方法に改善の余地があると考えられた。一方、木口面を仕上げた柱材の場合、密度およびヤング率の非破壊評価法として本法が適用できると考えられた。さらに、桟木が振動の節の位置からずれたとしても1本分程度であれば推定精度に影響を与えないことが示された。なお、周波数スペクトルのピークがわずかに真の共振周波数と差を生じることによる測定誤差の改善方法として、ピーク付近の周波数の平均化を提案した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
高含水率試験体を天然乾燥させながら質量付加振動法から得られた密度とヤング率を検討した結果、推定精度は、乾燥過程での試験体の重量減少により振動試験中に共振周波数が上昇することの影響を受けたため、集中質量あり、なしの順番で測定すると十分な推定精度が得られること、また、曲げ振動の方が縦振動よりも共振周波数の測定誤差の影響が小さく、推定精度が高いことが理論的および実験的に明らかとなった。 一般に流通している構造用実題材すなわち目視等級区分されたスギ柱材を用い、質量付加振動法の適用性を検討した結果、木口面を仕上げない場合は、木口面が傾斜しかつ粗いなどの木口面の不斉により集中質量の付着箇所で減衰が生じ、共振周波数の低下によって推定値が減少したため、集中質量の付着方法に改善の余地があると考えられた。一方、木口面を仕上げた柱材の場合、密度およびヤング率の非破壊評価法として本法が適用できると考えられた。また、桟木が振動の節の位置からずれたとしても1本分程度であれば推定精度に影響を与えないことが示された。 さらに、周波数スペクトルのピークがわずかに真の共振周波数と差を生じることによる測定誤差の改善方法として、ピーク付近の周波数の平均化を提案した。 以上より、今年度の研究計画に対して現在までの進捗状況を「おおむね順調い進展している」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
小型桟積みモデルで得た知見を基に、質量付加振動法の実大材への適用性を検討する。気乾状態の実大試験体を桟積みし、各試験体の密度およびヤング率を質量付加振動法で求め、その精度を検証する。 木製防護柵モデルを用い、支柱に取り付けられた横棒の密度およびヤング率を質量付加振動法で求め、その精度を検証する。
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Causes of Carryover |
平成28年度中に研究成果を論文に投稿し掲載可能となったものの、掲載料の請求が平成28年度中になされなかったことと、平成28年度中にさらに別の論文投稿を行う可能性があったが、投稿しなかったことにより次年度使用額が発生した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
論文の掲載料の支払いを行う。また論文の投稿を予定している。
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