2016 Fiscal Year Research-status Report
磯焼け域に生息する表在性巻貝類を利用した海藻シードバンクの検出
Project/Area Number |
15K07525
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Research Institution | Tokyo University of Marine Science and Technology |
Principal Investigator |
藤田 大介 東京海洋大学, 学術研究院, 准教授 (70361813)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ユキノカサガイ / シードバンク / 潜在的植生 / 磯焼け / 遺伝子解析 / メタゲノム解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
女川町指し浜地先で植生や底質が大きく変化する4区画帯(水深2m:砕波帯,水深6m:残藻帯,水深8m:磯焼け帯,水深11m:冠砂帯)で,ユキノカサガイとウニ2種の生息密度調査の5回目を4月に実施した。昨年6月に始まる5回の調査により,ユキノカサガイとキタムラサキウニは全区画帯に出現するが,前者は水深8m以浅,後者は水深6m以浅に多く,エゾバフンウニは水深6m以浅にのみ出現することが明らかになった。ユキノカサガイの生息帯にはウニ類も多く,キタムラサキウニに加え,ユキノカサガイ幼貝およびクボガイによるユキノカサガイ殻表面の摂餌も海中で観察され,昨年の標識放流の標識札の脱落の一因と推察された。 昨年8月に各区画帯から採集したユキノカサガイ6個体のrbcL遺伝子解析を進めた。Rosch454から57531配列を得て,褐藻17,紅藻13のOTUが検出された。各区画帯では,砕波帯で16OTU,残藻帯で14OTU,磯焼け帯で11OTU,冠砂帯で26OTUが検出され,冠砂帯で最も多くのOTUが得られた。藻場を形成する大型褐藻類としてはワカメとスジメのOTUが検出されたが,冠砂帯のみで検出され,上記の植食動物の生息密度が低いことによると推察された。 OTUに基づく類似度解析(クラスター解析,NMDS解析)の結果,区画帯ごとに出現種の違いが認められ,特に,植食動物が少なかった冠砂帯は他と大きな差が認められた。また,昨年来のユキノカサガイ殻を用いた培養により検出できた褐藻と紅藻計9種(形態により同定)については,いずれも同属のOTUが検出され,実際の植生を反映していることが示唆された。なお,本年12月にもユキノカサガイを採集し同様の解析を準備していたが,Roche454の関連サービスが打ち切られ使用できなくなったため,新たにMiseqによる分析を委託にて行い,結果を解析中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
東日本の海藻シードバンクを検出する研究は,女川町指し浜の一連の調査で順調に進行してきたが,時期を変えて採集したユキノカサガイのメタゲノム解析を行う準備を進めていたところ,上記のようにRoche454の関連サービスが打ち切られ使用できなくなったため,新たにMiseqによる分析委託の必要が生じ,西日本の海藻シードバンク検出のための大分県佐伯市におけるギンタカハマ採集・分析(原案においても副次的で,昨年度は海域での分布調査のみ実施した)を行うことができなくなった。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度委託によってMiseqによるメタゲノム解析の結果を解析するとともに,昨年度に標識放流した個体の追跡および海底でカゴに転石とともに入れたユキノカサガイの成長を確認する。また,他の学内予算など(未定)で余裕があれば,西日本におけるギンタカハマのメタゲノム解析も実施する。さらに,これまでの成果をまとめて,報告書と普及解説版を作成する。
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