2016 Fiscal Year Research-status Report
温暖化に伴う温帯沿岸の環境変化が水産有用魚類の種組成の遷移に与える影響
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15K07529
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Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
中村 洋平 高知大学, 教育研究部総合科学系黒潮圏科学部門, 准教授 (60530483)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 地球温暖化 / 環境変化 / 魚類 |
Outline of Annual Research Achievements |
岩場からサンゴ場への環境変化が魚類の生息場所利用パターンに与える影響を明らかにするために、高知県沿岸の岩場とサンゴ場における植食魚類6種と底生無脊椎動物食魚類(以下、ベントス食魚類)6種の個体数密度(分布)と摂食行動(1個体30分間の行動追跡調査)を調べた。摂食行動について昨年度と今年度に調査を行った個体を合わせて解析したところ(各種20~40個体)、植食魚類のうち熱帯種のヒブダイとニセカンランハギは死サンゴ場で、温帯種のブダイとメジナは岩場で主に摂食していたことが明らかになった。ベントス食魚類をみると、熱帯種のチョウチョウウオとフウライチョウチョウウオとオジサンはサンゴ場で、温帯種のカワハギは岩場で主に摂食していた。その他の種(植食魚類のニザダイとニジハギ、ベントス食のコベンヒメジとキュウセン)は岩場とサンゴ場で摂食していた。また、摂食場所が各種の主要な生息場所になっていることも明らかになった。 また、カジメ場からサンゴ場への環境変化が、魚類の着底場選択に与える影響を明らかにするために水産有用種の稚魚を対象とした基質選択実験を行った。2016年4月から7月にかけて土佐湾沖で採集した6種類(メバル類、イシダイ、イシガキダイ、イスズミ類、メジナ、カワハギ類)の稚魚を、カジメとサンゴを設置した水槽内に放したところ、カワハギ類のみがカジメに対して有意な正の選択性を示した。 以上の結果から、温暖化に伴うカジメ場の消失やサンゴ場の拡大などの基質環境の変化は、温帯種を中心としたいくつかの魚種の着底場や摂食場所の利用に負の影響を与える可能性があることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
魚類の着底場選択と摂食基質に関する研究は概ねデータを得ることが出来た。一方で、分布を決定する要因に関する研究と緯度間での生息場所利用パターンの違いに関する研究については一部のデータしか得られていない。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度と次年度で調査個体数が少なかった種の補足的調査を進めるとともに、魚類の分布と摂食場所を決定する要因(餌生物相など)に関する調査を行う。また、緯度間での主要魚種の生息場所利用や食性の違いについても調査を行う予定である。
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Causes of Carryover |
最終年度は主要魚種の生息場所利用や食性の緯度間比較調査を集中的に行う予定となっており、そのための調査旅費が高額になることを鑑みて一部の予算を次年度に繰り越すことが良いという判断に至った。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
主要魚種の生息場所利用や食性の緯度間比較調査を集中的に行う。
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Research Products
(2 results)