2016 Fiscal Year Research-status Report
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15K07533
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
加戸 隆介 北里大学, 海洋生命科学部, 教授 (40161137)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ナンオウフジツボ / 国内分布 / 分布北限 / 分布南限 / 付着時期 / 岩礁域 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.国内における移入種ナンオウフジツボの分布域調査(継続):本年度は福岡県(伊崎漁港、和白干潟)、山口県(角島、仙崎、恵比須)、北海道(熊石、利尻島)を調べた。その結果、北海道の熊石においてのみ本種が少数確認されたに留まった。熊石においては採集個体がごく少数であったため、DNA用のサンプルは入手できなかった。これまでの結果をまとめると、2016年度時点における本種の日本海側での分布域の南限は富山県魚津漁港、北限は北海道熊石漁港となる。日本海側中国地方は東北地方に比べて移入元と考えられる韓国により地理的に近いのにもかかわらず本移入種の生息が確認できない理由は定かではないが、中国地方は海流の関係で幼生分散域から外れている可能性も否定できない。 2.幼生形態:幼生飼育は複数回実施され、幼生形態用のサンプルを得ることが出来たが、形態記載は2017年度に持ち越された。岩手県越喜来湾においては、本種幼生が確認できたのは夏に限られている。 3.ナンオウフジツボの付着時期:岩手県越喜来湾における付着時期を継続調査した結果、6月から12月の期間に付着が認められた。越喜来湾においてはナンオウフジツボの付着が初めて確認された2012年(8月のみに付着)以降、毎年徐々に付着期間が延びている(2016年では6月から12月)ことが明らかとなった。その理由の一つとして、海水温が上昇している可能性が示唆された。 4.ナンオウフジツボの天然岩礁域での出現:露出度の高い天然岩礁域(吉浜湾舟作海岸)において、初めて本種の出現を確認できた。確認個体のほぼ全ては生存しており、岩礁域は露出度が高い結果、キタムラサキウニなどの捕食者による排除を受けずに済んでいると考えられた。一方、港内でその存在が確認できた場所では、その多くがキタムラサキウニによると見られる捕食により、殻の破損、剥離が観察された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.遺伝子解析用のサンプルがその後新しい調査地で採集されていないため、過去の状況と変わってはいない。東アジアでの移入起源と考えられる韓国により近い西日本日本海側の福岡県、山口県で本種の分布が認められていない理由を推定するためには、海流の流路、水温・塩分耐性などを考慮して考察することが必要と考えられる。(この研究内容に関しては、予定の成果を上げている) 2.幼生形態記載に関しては現状でまだ完了できていない。その理由は、本種と在来種との塩分・水温の複合実験に時間を擁したためである。(当初予定からやや遅れている) 3.その他、本種の天然での他生物との競合関係、天然岩礁での出現なども確認できており、自然条件下での生残や分布状況が明らかになりつつある。(当初予定以上の成果を上げている)
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Strategy for Future Research Activity |
1.韓国からDNA用標本を持ち帰ることが困難な現状に鑑み、これまで調査できていない調査地の最西端である対馬での調査を最優先で実施する。その他、日本海側で未調査の京都府、滋賀県、石川県についても調査を試みる。 2.幼生形態について、頭甲形態、付属肢の刺毛式、を明らかにする。 3.移入種の生態調査地(岩手県越喜来湾)における移入種と在来種との関係を過去2年間の成果を含めて取りまとめることにより、本種が本邦の生態系における多様性に及ぼす影響を総括する。
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Causes of Carryover |
1.対馬における移入種調査予算およびDNA標本が新たに得られなかったことによる分析予算が次年度に繰り越された。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
1.韓国からの分布拡大の現状を明らかにするため、日本海側の未調査沿岸域(対馬、京都府、滋賀県、石川県沿岸)における移入フジツボの分布状況を調査する費用として使用する。 2.三陸海域での本種のその後の変化(付着時期、成長、他生物との関係)を、越喜来湾を中心に実施する。
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Remarks |
東日本大震災後の岩手県大船渡市三陸町(越喜来湾)の岸壁における生物相変化を5年間にわたり調査してきた結果を解説。新規移入種であるナンオウフジツボについても2012年の初記録以来一時的に個体数を増やしたが、キタムラサキウニ、チヂミボラなどの肉食性腹足類の増加により、個体数を減少させている。
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Research Products
(3 results)