2016 Fiscal Year Research-status Report
「タイマー遺伝子」発現量を指標とした鉢クラゲ発生条件の解明
Project/Area Number |
15K07539
|
Research Institution | Fisheries Research and Education Agency |
Principal Investigator |
豊川 雅哉 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 西海区水産研究所, 主任研究員 (60371837)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | mRNA / cDNA / プライマー / クラゲ発生モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度は,エチゼンクラゲのポリプからクラゲへの変態過程における,複数の段階でトランスクリプトーム解析を実施した。本年度は,このとランスクリプトーム解析の結果から,変態過程で発現量が増える配列で,ミズクラゲにおけるタイマー遺伝子に近い配列(RX2),発現量が変わらない伸長因子(EF1)等と相同と考えられる配列4種を選択し,プライマーを試験的に作成した。 エチゼンクラゲのポリプを低温条件に置き,4, 11, 16, 30, 44日後にRNAを抽出した。抽出したRNAを,沖縄科学技術大学院大学の研究協力者のラボに送付し,同ラボに滞在してオリゴdTセルロースビーズを用いてmRNAを精製した。精製されたmRNAを鋳型にして逆転写反応を行い,cDNAを作成した。 得られたcDNAについて,上記のプライマーを用いたPCR実験を行った。その結果,EF1とRX2についてcDNA断片の増幅が検出されたが,他の3種については増幅が確認されなかった。 今後,リアルタイムPCRを用いた実験を実施するためには,プライマーの改善が必要である。 同様にミズクラゲのポリプから,mRNAを抽出,精製し,cDNAを作成する実験を,西海区水産研究所のラボにおいて数回実施したが,いずれも十分な収量が得られなかった。 「クラゲ発生モデル」のパラメーターをPrice法により推定するRスクリプトを開発し,手持ちのデータを用いてパラメーターを推定した。現状では推定に用いるデータが少ないためか,パラメーターの推定値が収束しなかった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
西海区水産研究所において,何度かmRNAの抽出精製を試みたが,mRNAがうまく精製されることがなかった。このため,発現量の定量を行う実験が全く実施できなかった。しかし,沖縄科学技術大学院大学(OIST)の研究協力者の実験室では,mRNAの精製からcDNAの合成までが可能であった。この結果を受けて,今年度は西海区水産研究所において,再度mRNAの抽出精製を試みるが,それでもうまくいかない時は,mRNAの精製以降の実験は,全てOISTに出張して実施することで,計画の遅れを最小限にとどめたい。
|
Strategy for Future Research Activity |
エチゼンクラゲについて,伸長因子(EF1)と,変態過程で発現量が増えると考えられる配列(RX2)のプライマーをより適合したものに改善し,リアルタイムPCRによる定量を実施する。リアルタイムPCRにより,低温処理によってRX2が増加することが確認されたら,様々な条件でRX2の定量を実施する。 この実験結果をもとに,クラゲ発生モデルのパラメーターを推定する。
|
Causes of Carryover |
2016年5月にスペインで開催れたクラゲ類大発生に関する国際シンポジウムに参加する予定にしていたが,この課題の進捗が予定よりも遅いため,シンポジウムの準備に時間を費やすことができないと判断したため,シンポジウムへの参加を取りやめた。このため,国内のシンポジウムに参加した分を差し引いても,海外出張の旅費に相当する分が余ることになった。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
沖縄科学技術大学院大学のラボに,2回以上出張,滞在して,mRNAの抽出精製実験を確実に実施する予定である。
|