2016 Fiscal Year Research-status Report
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15K07542
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
平松 一彦 東京大学, 大気海洋研究所, 准教授 (00371914)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 資源量推定 / VPA |
Outline of Annual Research Achievements |
H27年度の検討により、複数の魚種(系群)で、資源量推定値が毎年上方修正または下方修正されていることが示された。このような修正は資源管理を困難にしていると考えられるが、その原因は明らかではなかった。本年度は特に顕著な下方修正または上方修正が見られるマサバ対馬暖流系群とスケトウダラ太平洋系群について、その原因を探った。 資源評価に使われるデータと方法は毎年変化するため、まずこれらの修正の原因がデータや方法の変化によるものか確認するため、最新のデータと方法を用いてデータの使用範囲を直近年から1年ずつ落として推定するレトロスペクティブ解析を行った。その結果、マサバ対馬暖流系群に関しては現在のデータと方法であっても同様のパターンが生じること、スケトウダラ太平洋系群では2012年評価以降は同様のパターンが生じるが、それ以前はデータや方法の変化の影響が主であることが示された。スケトウダラ太平洋系群では、2005年級群の加入量が推定の度に直線的に上方修正されていたが、これはデータや方法の変化の影響が大きいことが明らかになった。 現在のデータと方法であっても下方または上方修正が生じる点については、資源評価で用いられているデータや仮定を見直し、これらを感度解析的に変化させることによりその原因を探った。マサバ対馬暖流系群に関しては、特定の年の資源量指標値が原因となっている可能性が高いこと、スケトウダラ太平洋系群の2012年評価以降の上方修正に関しては、過去の資源量指標値と近年の年齢別漁獲尾数データが影響している可能性が高いことが示された。 資源評価の信頼性の向上のためには、マサバ対馬暖流系群に関しては資源量指標値の算出方法、スケトウダラ太平洋系群に関しては資源量指標値と年齢別漁獲尾数の見直しが重要と考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
資源量推定値の下方修正および上方修正が顕著であったマサバ太平洋系群とスケトウダラ太平洋系群を対象にその原因を探ったが、種々の要因が複雑に絡み合っていたため 、その分析に多くの時間を要した。このため類似の挙動を示した他の魚種(マサバ太平洋系群やゴマサバ太平洋系群等)の検討はH29年度に延期することとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
マサバ太平洋系群やゴマサバ太平洋系群等における資源量推定の系統的な上方または下方修正について、H28年度と同様の手法を用いてその原因を探る。その後、最新の資源評価結果も加えて、対象としている10系群全体について新たに資源評価の信頼性の比較を行ない、昨年までの結果と比較する。 これらの結果を基に資源評価の信頼性を評価し、また各系群の資源量推定の特徴と問題点を明らかにする。特に信頼性に大きな問題があると考えられる系群に関しては、信頼性向上のための指針を示す。
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Causes of Carryover |
解析作業がやや遅れたために、予定していた論文投稿までには至らなかった。また出張に際し、安価な航空券を使用したため旅費の使用金額が当初の想定よりも少額となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
H28年度に予定していた論文投稿を行う。また、北海道区水産研究所および西海区水産研究所での最新の情報収集および研究打合せに使用する。当初計画ではH29年度の情報収集はそれぞれ1回の予定であったが、これを各2回とする。
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