2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K07546
|
Research Institution | Tokyo University of Marine Science and Technology |
Principal Investigator |
馬場 治 東京海洋大学, 学術研究院, 教授 (40189725)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 沿岸漁業 / 漁業経営 / 協業化 / 養殖業 / 定置網 / 後継者 / 高齢化 / 地域漁業 |
Outline of Annual Research Achievements |
27年度は、東日本大震災被災地の三陸地域において、主に養殖業を中心とする協業化の進展状況と課題を中心に研究した。その結果、養殖作業の工程の違いが、協業化に進むインセンティブの強弱に影響を与えることが推測された。 28年度は、被災地以外での採捕型漁業の協業化の現状と、協業化への移行の可能性等について研究した。一つ目は、秋田県のハタハタ漁業における協業化への取り組みの実態把握である。秋田県では、かつてハタハタ資源の衰退から3年間の禁漁を行い、解禁後は、総漁獲量制限とその地区別・漁業種類別割当を行い、厳密な漁獲制限を開始した。その過程で、同じ地区に存在する、漁獲効率が相対的に低い刺網漁業者と効率が高い定置網漁業者の間で、相互扶助的な観点から、協業が始まった。ハタハタ漁期だけ、刺網漁業者が定置網漁業に乗組員として加わるという協業である。このことによって、刺網漁業者の収入が増加し、労働負荷も低減された。他方、定置網漁業においても、乗組員が加わったことによって漁獲物選別等の作業速度が向上し、総水揚げも増加し、収入の増加につながった。 二つ目は、氷見地区の定置網漁業の協業化の可能性検討である。氷見地区は、定置網発祥の地の一つとされ、多数の定置網が短い海岸線にひしめくように敷設されている。近年、資源の来遊の変化から、定置網水揚量に減少傾向が見られるようになり、定置網の統合の必要性が一部で指摘されている。また、家族操業中心に行われる小型定置においては、高齢化や後継者不足から、操業の継続が困難な経営体も見られるようになってきた。このような状況への対応の一つとして、協業化による定置網の統合の可能性を検討した。その結果、統合のモデル事例を示す必要がある点では理解が得られたが、現地にまだ統合するまでの切迫感がない点が、大きな課題であることが分かった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
27年度は、被災地での調査が中心で、漁業の復興作業との関係で、日程調整に困難な場合がたびたびあったが、28年度は被災地以外での調査が中心であるため、日程調整はほとんど問題なくできた。 予算との関係では遅れているように見えるが、調査地の多くが、当方と従来から研究上のつながりが深かった地区であり、現状把握については比較的短時間での調査で成果が得られるようになってきたことから、訪問回数は少なくても成果は十分に得られている。
|
Strategy for Future Research Activity |
29年度は、27年度の被災地、28年度の被災地以外での既存調査地の追加調査とともに、新たな被災地以外での協業化有名事例の調査を加える予定である。29年度に調査を行う予定の被災地以外での協業化事例については、研究代表者がこれまでに調査経験のある事例が多く含まれており、調査遂行上は大きな問題はないと考えている。29年度調査結果を加えて、27年度、28年度の研究成果の総括を行い、最終成果として、協業化のメリット、デメリット、課題を検討した上で、高齢化、後継者確保難から漁業経営の維持が困難となっている沿岸漁業の今後の経営形態の方向性としての協業化の有効性を示すことを目指す。そこでの重要な視点は、従来の個別競争的な漁業経営形態ではなく、地域の産業としての漁業を維持していくための一手法としての協業化という視点である。このような観点から、単に研究成果として協業化を取り上げるだけでなく、実際の漁業現場において、協業化への移行に向けた検討を促すような活動にも取り組みたいと考えている。
|
Causes of Carryover |
28年度は被災地以外での協業化に関する調査が中心であったが、学内業務との関係で、遠方の調査地や1回の調査日程での複数日調査日数確保が困難であったことから、予算の消化が予定どおりには進まなかった。また、収集した資料整理に手間取り、データの入力等の作業のための研究補助者の活用も十分には行えなかった。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
29年度は、早い時期からの調査を考えており、調査地の訪問回数も増加する予定である。また遠隔地での調査が加わることと、調査補助者を利用した調査を想定しており、その点でも予算を要する。また、最終年度であり、収集した資料の整理とデータ入力のための作業にも補助者確保の必要性があり、そのための予算使用を考えている。
|