2016 Fiscal Year Research-status Report
エビ類の疾病予防への新たなアプローチ‐免疫系と内分泌系のクロストークの解明‐
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15K07555
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
伊丹 利明 宮崎大学, 農学部, 教授 (00363573)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
酒井 正博 宮崎大学, 農学部, 教授 (20178536)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | クルマエビ / サイトカイン / ホルモン / 低酸素 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、エビ類において細胞増殖や細胞・組織の活性化等を制御するサイトカインとホルモンとのクロストークに着目し、疾病防除対策を目的として、従来の免疫機構の解明に加えて、脱皮などエビ類に特有の内分泌機構から見た、疾病防除のための新たなトランスレーショナルリサーチを目指す。 初年度で明らかにしたクルマエビのglycoprotein hormone subunit alpha 2 (GPA2)、Hypoxia Inducible Factor-1 (HIF-1、-2) 遺伝子、Glucose Transporter (GLUT) 遺伝子、Vascular Endothelial Growth Factor (VEGF) 遺伝子、I型インターフェロン様遺伝子であるVago遺伝子を中心に解析を進めた。その結果、ホルモン等が大きく変化する脱皮と関連する低酸素状態になると、鰓における遺伝子発現では、VEGFは24時間後に有意な差を示した。腸においては、HIF-1αと-1βおよびVEGFに有意に発現が高くなった。GLUTは対照区に比べて有意な差は見られなかったが、平均的に高い値を示した。同時に、このような生理状況になると12時間で乳酸が血液中に蓄積されることも確認した。さらに、植物発酵物を予め投与したエビでは、GPA2の7日目の個体が顕著に高い発現を示し、このような個体では低酸素環境に抵抗性を示したことから、GPA2が低酸素環境への抵抗性を示す指針となると考えられた。低酸素と同様に、模擬的なウイルス感染として、GFP-dsRNAを注射して、これらの関連する遺伝子の動態を調査した。HIF-1α、FIH-1およびVHLの発現が顕著に増加した。このことから、HIF経路は低酸素時だけでなく感染時においても活性化することが明らかとなり、低酸素環境と易感染性の関連性が明らかになりつつある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた実験項目はほぼ網羅している。GPA2dRNAによるノックダウンについては、死亡個体が見られた。しかし、その後の解析によって、当該遺伝子が残存していることから、エビの死亡原因がノックダウンによって誘導されたものかどうか明確な結果とは言えない。タンパク合成に関しては、バキュロウイルスの系では培養に問題があったためか、タンパクの合成には失敗した。そこで、大腸菌の系でタンパク合成を実施している。現在、Hisタグによる精製段階であり、タンパクの合成が確認できている。今後、抗体の作製とその特異性に関する検討が必要となる。タンパクの合成と抗体の特異性に問題があった場合を考えて、現在mRNAをターゲットとしたin situ hybridizationの可能性を医学部の専門家と共同して調査するなど、今後の研究の展開に対して万全を期している。 一方で、ストレス負荷によって発現する各種遺伝子、HIF-1、-2 遺伝子、GLUT 遺伝子、VEGF 遺伝子、I型インターフェロン様遺伝子(Vago遺伝子)の発現動態が明らかになるとともに、ミミックなウイルス感染やこれに対応するための免疫賦活剤がホルモン関連遺伝子の上昇を誘導したことから、耐病性とホルモンとの関連性が示された。とくに、HIF経路がストレスと易感染性にシグナルトランスダクションの中で関連していることは興味深いので、今後詳細に調査したい。 このことから、本研究の目的であるサイトカイン系遺伝子とエビの内分泌系遺伝子との相互作用をより広い範囲で網羅的に研究することが可能となった。今後の研究の基盤的情報と感染や感染防御に関する新たな知見(ホルモンとの関連性)が集積されつつある。 以上の理由から、進捗状況としてはほぼ適正に研究が進んでいると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
先に記載したように、リコンビナントタンパクのリホールディングなどの理由で、抗体の特性が低いなどの理由により、適正に抗体が使えない場合を考えて、mRNAをターゲットとしたin situ hybridization (ISH)を現在試行中である。医学部の専門家と共同して実施している。GPA2などの遺伝子発現を細胞内での局在性を観察して、臓器、血球、鰓などにおける分布を観察する。同様に、サイトカインの発現も細胞内および組織内で調べ、ウイルス等の罹患時における上記のホルモンの局在性と比較する。リコンビナントタンパクに対する抗体が使用できれば、これと併用してタンパクの局在性をmRNAのそれと比較することも可能となる。さらに、この手法を用いて、エビ類では培養が困難とされている造血細胞における各遺伝子の発現も観察する。ウイルスや細菌を感染させたクルマエビにおいて、前述の3 種類の血球の細胞集団における機能分化と病態の関係を調べる。また、前述したホルモン系遺伝子の発現を誘導する植物発行物を利用して、経口投与ごのホルモン遺伝子とサイトカイン遺伝子の発現動態、ならびに微生物感染時におけるこれらの動態を調査して、関連性を明らかにする。 サイトカインとホルモンとのクロストークを解析するために、サイトカイン遺伝子(IL-6, IL-17, Vago等)のノックダウンを行い、ノックダウンを確認したうえで、ホルモン遺伝子の動態も調べる。ノックダウンと同時に、ウイルスや細菌による感染あるいはGFP-dsRNAによる模擬感染を実施し、クルマエビのサイトカイン遺伝子とホルモン遺伝子の動態並びにNF-κB 経路にある遺伝子群とHIF経路上の遺伝子群の動態を観察する。
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Research Products
(9 results)
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[Journal Article] Antiviral activity of 3-(1-chloropiperidin-4-yl)-6-fluoro benzisoxazole 2 against White spot syndrome virus in Freshwater crab, Paratelphusa hydrodomous2016
Author(s)
Rajashekar Reddy, C.B., Dinesh, S., Anusha, N., Itami, T., Rajasekhara Reddy, S., Sudhakaran, R.
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Journal Title
Aquaculture Research
Volume: 47
Pages: 2677-2681
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research / Acknowledgement Compliant
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