2017 Fiscal Year Research-status Report
タイヘイヨウサケの降海期多型の指標探索と好適種苗生産への応用
Project/Area Number |
15K07572
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Research Institution | Miyagi University of Education |
Principal Investigator |
棟方 有宗 宮城教育大学, 教育学部, 准教授 (10361213)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | サクラマス / マスノスケ / 降海期多型 / 好敵種苗 / 銀化変態 / 熱ショックタンパク / HSP70 / 行動 |
Outline of Annual Research Achievements |
サクラマスやマスノスケなどの太平洋サケの降海期多型の弁別手法を開発し、好適種苗の生産に応用することを目的とした研究を行っている。サクラマスでは、宮城県の在来系群に内包される降海期多型(秋降海群・春降海群)をより早期に、かつ簡便に弁別する手法を開発するため、受精卵の時点で卵を重量に応じて大卵群と小卵群に分類して追跡した。その結果、大卵群は小卵群よりも孵化後の体サイズが大きいとともに、パーマークなどの体側の模様の数が多いことなどが明らかとなった。このような外部形態を指標として、秋・春降海群の魚が大卵群由来か小卵群由来かを明らかにすることができると考えられた。また、大卵群・小卵群が将来どのような回遊生態を示すかを追跡することで、降海期多型と受精卵の性質を関連づけて好適種苗の生産法を検討することが可能になると考えられた。 次に、オレゴン州立大学で飼育しているマスノスケを、ふ化後の水槽内の遊泳層に応じて表層(秋降海)群・底層(春降海)群の2群に分け、今年度は表層群の飼育水槽の水温を低下、あるいは上昇させた際の鰓と肝臓の熱ショックタンパク(HSP70)の遺伝子発現量を定量PCRによって測定した。結果、鰓のHSP70は水温の低下、上昇によっていずれも減少し、肝臓のHSP70は水温の低下、上昇によっていずれも増加することがわかった。これらのことから、表層群では水温変化に対するHSP70遺伝子の応答が鰓と肝臓で異なることが示唆された。今後は、底層(春降海)群についても同様に水温低下に伴う鰓と肝臓のHSP70の遺伝子発現を調べ、両者を比較することで表層群と底層群の水温変化に対する反応性の差違を検討することが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成29年度は、サクラマスを受精卵の重量に応じて大卵群と小卵群に分類し、その後の体サイズや形態の差違をモニターしたが、平成29年度の時点では稚魚がまだ降海期のステージ(銀化変態期)にまで達していないため、今後のさらなる追跡調査が必要と考えられた。またオレゴン州立大学と共同で行った実験では、マスノスケの表層群と底層群のうち、表層群の熱ショックタンパク(HSP70)の水温低下・上昇に対する反応性を解析したが、他方の底層群の同様の解析を行うことができていないため、今年度、継続して解析を行うことが必要と考えられる。また現在、水産試験場と共同で宮城県の野生サクラマスの降海期多型(秋降海群、春降海群)の銀化変態に伴う海水適応能等の変化を調べており、平成30年度も引き続き銀化変態に伴うホルモン量の変化や、鰓のNKA活性等を解析することでより多くのデータが得られると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
サクラマスについては、平成29年度に受精卵の時点で大卵群と小卵群に分類した稚魚のモニターを継続し、当歳魚の秋の時点で、両者の銀化変態の進行度を甲状腺ホルモンやコルチゾルの血中量で評価するとともに、鰓のNKA活性の測定や海水チャレンジテストを行うことを計画している。また、オレゴン州立大学との共同研究では、上記したとおり平成29年度にマスノスケの表層型の鰓と肝臓の熱ショックタンパク(HSP70)の水温低下、上昇に対する反応性を調べたことの延長として、底層型についても同様の試験を行い、両者の間で水温変動に対するHSP70の反応性の差違があるか否かを検討する計画である。また、宮城県内水面水産試験場との共同研究として、宮城県内の2系統(秋スモルト群・春スモルト群)の銀化変態の進行度を比較するため、秋から春にかけての両者の外部形態や銀化変態に関わるホルモンの血中量、NKA活性等を比較する計画である。
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Causes of Carryover |
第一に、今年度は大学の業務等が多忙であったため、オレゴン州立大学への出張期間を削減せざるを得ず、予定していた2群の実験(表層群、底層群)の実験のうち、表層群のサンプリングならびに解析しか行うことができなかったため、引き続き次年度は底層群の解析に対する支出を計画している。また当初、長期サンプリングを予定していた水産試験場の飼育サクラマスの大半がアクシデントで死亡したため、これに対する経費も支出されず残される形となった。これに関しては、平成30年度に再度、実験を行う計画を進めており、解析のための消耗品費等を支出する計画である。
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Research Products
(9 results)