2018 Fiscal Year Research-status Report
カレイ類の無眼側黒化におけるストレス-コルチゾル系の関与
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15K07575
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
田川 正朋 京都大学, 農学研究科, 准教授 (20226947)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ヒラメ・カレイ類 / ストレス / コルチゾル / 無眼側黒化 / 着色型黒化 / 網敷き飼育 |
Outline of Annual Research Achievements |
カレイ類では、放流や養殖のための稚魚を生産する際に、天然魚とは異なる色や形になってしまう形態異常個体が高率で出現し、栽培漁業や養殖のための重大な障害となっている。昨年度までの研究により、ストレスによって分泌が促進されるホルモンであるコルチゾルが、飼育環境下のカレイ類に見られる着色型黒化の直接原因の一つであると確認できた。また、水槽に網を敷くことで着色型黒化を強力に防除できることなどを再現性良く確認できている。そこで本年度は、網敷き飼育による着色型黒化の防除に関して、主に以下の2点について検討を行った。 1)マツカワにおける着色型黒化の防除の可能性:大きく成長し美味なことから北海道などで盛んに放流されているマツカワについて、予備的な検討を行った。残念ながら状態の良い稚魚を実験に用いることが出来なかったものの、砂や網を用いることで無眼側の黒化程度がやや減少する傾向が確認できた。一方、無眼側の大部分がヒラメで見られるような明瞭な白地ではなく、全体に薄黒くなってしまっているなど、状態の良い稚魚を用いた再検討の必要性が明らかとなった。 2)養殖現場への応用を目指した網敷き飼育の効果の検討:これまでの研究は、様々な制約から2ヶ月程度の飼育実験によるものが多かったため、養殖業者が出荷サイズまで育てた場合の効果については不明であった。そこで、長崎県の協力を得て6ヶ月にわたる飼育実験を実施した。結果の解析が完了していないが、通常の水槽による飼育と比べると、網敷き飼育では着色型黒化は十分良好に抑制はされていたものの、少しずつ出現してしまうことが分かってきた。これは底面を魚体が覆う割合が個体の成長にともなって増加し、結果として網と無眼側の接触が不足したためである可能性が高い。適正な底面積あたりの魚体被覆度の検討など、養殖現場での応用に向けた長期飼育に伴う新たな課題が明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
飼育水槽に網を敷く方法は効果的であるだけでなく再現性も高い。そのため興味を持って頂ける試験研究機関が増加し、研究を更に展開することが可能となってきた。この恵まれた状況を積極的に活用し、ヒラメ以外のカレイ類への応用の可能性の検討や、養殖現場での実用化に直結するような予備的な検討を進めつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
全体としてみた場合、特に方針に大きな変更や修正すべき点はない。その一方で、今年度はより大きな水槽における長期の網敷き飼育による着色型黒化の防除効果などを検討したが、網敷き飼育は商品サイズまで育てた場合であっても、飼育密度を調節することで十分な効果を持続できる可能性が見えてきた。この結果を発表する上で、なぜ網がこれほど有効か、血中のコルチゾル濃度に基づいてストレスの観点から論じるための実験などを、追加して実施する。
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Causes of Carryover |
共同研究を実施して頂いた研究機関の好意により、実験に用いた消耗品や飼育経費を大幅に軽減することができた。 より完成度の高い研究として発表するため研究期間を延長した。すなわち2019年度にもサンプリングのための出張や、ホルモン測定のための消耗品や試薬などの経費が必要となるため、これらに使用する。
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Research Products
(4 results)