2016 Fiscal Year Research-status Report
甲殻類の成熟を制御する内分泌系: 卵巣由来タンパク質ホルモン群の包括的解析
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15K07576
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
筒井 直昭 岡山大学, 理学部, 助教 (00643785)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 甲殻類 / クルマエビ / 卵黄形成 / ホルモン |
Outline of Annual Research Achievements |
クルマエビ卵巣のトランスクリプトーム解析から見出されたホルモン様因子のうち、甲殻類雌性ホルモン (CFSH) について詳細な解析を行った。CFSH遺伝子の発現は生殖腺のみで観察された。卵巣での遺伝子発現は、未成熟期より卵黄形成期で高い傾向にあった。CFSHタンパク質についても同様の変動を示すことが、CFSHに対する特異的抗体を用いたウェスタンブロッティングによって示された。免疫組織化学染色とin situハイブリダイゼーションにおいて、CFSHの発現は、卵黄形成期の卵巣の大部分を占めている発達中の卵母細胞群では観察されず、一部含まれている卵黄形成を開始していない卵母細胞群において認められた。以上から、CFSHはクルマエビ属に見られる多回産卵の制御と何らかの関連があると推測された。加えて、CFSH遺伝子の発現は、クルマエビ眼柄内のX器官/サイナス腺複合体から分泌される卵黄形成抑制ホルモン (CHH/VIH) による制御を受けていない可能性が示された。 また、クルマエビCHH/VIHの一分子種 (Pej-SGP-I) の前駆体について、構造活性相関に関する基盤的情報を得ることを目的としてX線結晶構造解析を行った。その結果、ペプチドのN末端側2/3の領域は、3対のジスルフィド結合と3つのα-ヘリックスからなる特有のフォールドを形成する一方、C末端側1/3の領域はフレキシブルな構造であることが判明した。CHHファミリーではC末端領域において配列の多様性が見られることと併せ、ペプチドのC末端領域が活性に重要であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
CFSHについて、特異的抗体を用いたタンパク質側からの解析、更には遺伝子側からの解析により、卵黄形成にリンクした興味深い発現パターンを見出すことができた。また、卵黄形成を制御する中枢のホルモンであるCHH/VIHについて、前駆体の立体構造を明らかにした。このことは、構造活性相関研究を基にした成熟制御技術の開発へと繋がる。
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Strategy for Future Research Activity |
トランスクリプトーム解析から見出されたCFSH以外のホルモン様因子(ニューロパーシン、バーシコン、CHHアイソフォーム等)について、同様に詳細な解析を進めるとともに、それらの生体での機能を明らかにするため、二本鎖RNA投与による遺伝子のノックダウンなどを試みる。
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Causes of Carryover |
予定より消耗品類への支出が少なく済んだために差額が生じた。その他に、予定していた国際学会への参加が都合により取りやめとなったため、その分の差額も生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
現在までに得られている研究成果について、国際学会や学術誌で発表する。
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