2015 Fiscal Year Research-status Report
エロモナス属菌の鉄獲得機構の解析と魚病発現の寄与に関する研究
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15K07591
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Research Institution | Matsuyama University |
Principal Investigator |
舟橋 達也 松山大学, 薬学部, 教授 (60343646)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | シデロフォア / 鉄 / Aeromonas hydrophila |
Outline of Annual Research Achievements |
エロモナス属菌のうち、Aeromonas hydrophilaの病原性発現における鉄獲得機構の寄与について明らかにすることを目的とする。さらに、魚病発現におけるシデロフォア(三価鉄輸送キレーター)産生やヘム鉄利用系の関与と鉄制御外膜タンパク質の魚病ワクチンとしての可能性について基礎的な評価を行い、鉄獲得機構が魚病を予防するためのターゲットの1つとなりうることを明らかにする。 当該年度ではA. hydrophilaが産生するシデロフォア、amonabactinに対する外膜受容体の同定とその内膜輸送機構について解析した。Amonabactinはその化学構造からグリシンを含む型と含まない型に分類され、さらにトリプトファンとフェニルアラニンをそれぞれ含む型の合計4種類(T789, T732, P750, P693)に分類される。これら4種類のamonabactinは、鉄制限合成培地にて培養した菌液の培養上清をフィルターろ過後、ポリアミドカラムクロマトグラフィーにより粗精製し、さらにHPLCによりC18逆相カラムを用いて単離精製した。鉄制御外膜タンパク質のN末端アミノ酸配列を決定し、同じアミノ酸配列を含む遺伝子をA. hydrophilaの全ゲノム配列から検索した。二回交差の相同性組換えにより各鉄制御外膜受容体遺伝子の欠失株を作製し、2つのamonabactin外膜受容体を同定した。また、それらの遺伝子は転写レベルで鉄制御されることをRT-qPCRにより検出した。また、一般に、シデロフォアと三価鉄複合体は外膜受容体からペリプラズム結合性タンパク質を介して内膜に存在するATP依存性の透過酵素により細胞質へ輸送される。本菌においてamonabactin外膜受容体遺伝子の近傍にはその内膜輸送に関与する遺伝子が存在しており、これらの機能についても各種欠失株の解析から明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究ではまず、A. hydrophilaにおける鉄獲得機構について解析することを目的としている。当該年度予定していた2つのamonabactinに対する外膜受容体遺伝子を同定することができ、さらにamonabactinの内膜輸送に関与する遺伝子も同定できたことから、おおむね順調に進捗しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
多くの細菌は鉄欠乏ストレスに応答して、自身が産生するシデロフォア以外に他菌種が産生するシデロフォア(外因性シデロフォア)を利用する機構を有している。本菌において、外因性シデロフォアとしてdesferrioxamine Bやferrichromeの利用能があることが分かっている。desferrioxamine Bに対する外膜受容体遺伝子の同定と解析については既に行っているため、今後はferrichromeに対する外膜受容体遺伝子の解析について進め、内膜輸送機構についても明らかにしていく。また、鉄源としてヘム、ヘモグロビンを利用する機構も存在することから、それらについても外膜受容体遺伝子の同定と解析を進めていく。
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