2016 Fiscal Year Research-status Report
農地流動化進展地域における地域農業ガバナンスの再編と機能化に関する研究
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15K07606
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
伊庭 治彦 京都大学, 農学研究科, 准教授 (70303873)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高橋 明広 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 中央農業研究センター, 主席研究員 (20355465)
坂本 清彦 京都大学, 農学研究科, 特定准教授 (30736666)
山下 良平 石川県立大学, 生物資源環境学部, 准教授 (40515871)
片岡 美喜 高崎経済大学, 地域政策学部, 准教授 (60433158)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ガバナンス / ドイツ農村女性連盟 / 社会貢献型事業 / 地域農業ガバナンス / プリンシパル / エージェンシー |
Outline of Annual Research Achievements |
本年は、研究計画にしたがい国内・国外の農業および農村に関わるガバナンスについて調査・分析を行った。その主な成果は以下のとおりである。まず、国内研究に関しては、農地流動化の進展と関係して集落内に組織されている実行組織の機能が低下しつつある実態を明らかにした。その上で、大規模経営(リーディング経営)が実行組織の機能を補完・代替することの論理構築を試みた。すなわち、第一に、新たな地域農業ガバナンスは、地域農業関係主体をプリンシパルとし、リーディング経営をエージェントとする構造へと再編される。第二に、プリンシパルである一般個別農業経営および農地委託者は、エージェントであるリーディング経営が担う事業運営に関して、各主体間の経済効率のバランス化を基準として評価する。第三に、プリンシパルである地域住民(農家、土地持ち非農家、非農家)は、農業の外部性が地域社会の住環境等に与える影響を対象として、エージェントが担う事業運営を評価する。第四に、農業ガバナンスの再編は「個」対「個」を「地域農業関係主体組織」対「リーディング経営集団」という関係へ再編する側面を有する。次に、国外研究については、ドイツ農村女性連盟の支部組織における組織管理とガバナンスに関して実態把握と理論的検討を行った。すなわち、第一に、総会を有する組織構造において公式なガバナンスが健全に機能している。同時に、支部活動の適正性の確保は、日常から活発に議論を行う組織員の特性に依るところが大きい。第二に、支部組織の役員会に各下部組織からの参加者を得ることにより、段階間の情報格差を抑制し、組織員のニーズに的確に応えられる企画作りを行っている。第三に、支部活動の実施に当たって協力スタッフを設置することはガバナンスを強化する効果を有する。第四に、全国組織による研修会の内容のリーディングは、活動方向のブレやズレを防ぐ。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画に従い国内および国外の事例調査を実施し、その結果から実態把握を行うとともに、理論構築を試み一定の成果を得た。これらの成果は国内外の学会において発表を行い、国内研究については書籍および論文として公刊を行った。国外研究に関しては、学会誌に投稿中である。なお、国内研究について、近年問題が深刻化している鳥獣害に対する地域社会としての取り組みに関して、ガバナンスの視点からの研究が必要かつ重要であることが明らかにとなった。ついては、次年度において調査・分析を行うための準備として、精力的に文献調査を行った。この点は、本研究における追加的な課題であるとともに、地域農業ガバナンス研究をより深めるものである。上のことから今年度の研究についてはおおむね順調に進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
研究の最終年度に当たる平成29年度は、これまでの研究成果を総括するため、国内および国外の農業・農村に関わるガバナンスに関して、前年までに試論的に構築してきた理論の精緻化を図ることとする。まず、国内研究に関しては、研究目的に即して、農地流動化がもたらす実行組織の機能低下とその補完・代替のメカニズムに関しての研究の取りまとめを行う。さらに、近年、その問題が深刻化している鳥獣害への対策の実施に関わる集落組織のガバナンスを新たな調査対象とし分析を行う。国外研究に関しては、前年度に引き続きドイツ農村女性連盟に関する補完調査を行い、研究の深化を図る。これらの調査結果は、国内外の学会にて報告するとともに、学会誌への投稿などをとおして公刊する。
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Causes of Carryover |
国内研究に関わる調査事例について近距離の事例が多かったため、予想よりも経費が掛からなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の研究費については、国内・外の事例調査、また学会における研究成果の報告に要する旅費、調査結果の分析に必要な謝金として使用する。
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