2015 Fiscal Year Research-status Report
中国野菜産地における販売チャネル多層化の実態とチャネル間関係に関する実証的研究
Project/Area Number |
15K07608
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
小野 雅之 神戸大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (90224279)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 中国野菜産地 / 産地流通 / 販売チャネル多層化 / チャネル間関係 / 卸売市場 / 農民専業合作社 / 野菜加工・販売企業 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.本研究は,中国における農産物産地流通が多様な流通主体によって担われているようになっていることから,その新たな動向を把握するため,野菜を中心に流通チャネルの多層化とチャネル関係の実態を明らかにしようとするものである。 2.中国における野菜生産の動向を把握するため,統計資料を用いて省別の野菜作付面積の動向を分析した。その結果,1980年代後半~90年代に早期に野菜生産を増加させた山東省に加えて,2000年代に河南省をはじめ湖南省,雲南省,四川省などでの生産が増加しており,沿岸部から中・西部地域への産地移動が進みつつあることが確認された。 3.沿岸部の代表的な野菜産地である山東省における流通チャネル多層化の実態を把握するため,魯中地域の淄博市博発卸売市場,青島市城陽卸売市場の実態調査と,青島市,煙台市の野菜加工・販売企業5社の実態調査を行った。2市場の実態調査の結果,博発市場は遠隔産地と大消費地との中継市場機能を持つこと,城陽市場は全国広域的な産地からの集荷と青島市内産地からの集荷機能を持ち,青島市を中心とする消費圏に分荷する消費地集散市場機能を持つこと,が明らかになった。また,野菜加工・販売企業の調査によって,原料野菜の集荷面では直営生産基地からの集荷を基本としているが,販売面では日本向け輸出に加えて,新製品開発とその国内市場向け販売に重点を移す企業の存在が確認できた。 4.山東省とともに中国を代表する野菜産地に成長した河南省の産地流通を把握するため,武漢市白砂洲卸売市場と鄭州市万邦国際卸売市場の実態調査を行った。両市場ともに,全国の産地から集荷を行い,武漢市,鄭州市を中心とする消費圏に分荷を行う消費地集散市場の機能を持っていることが確認されたが,省内の青果物産地との結びつきについては今回の調査では十分に確認することができなかったため,今後の補足調査が必要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の実態調査結果と,これまでの研究で得られている知見をもとに,山東省の産地流通チャネル多層化の実態に関しては,一定の把握ができた。ただ,山東省に関しては農民専業合作社の実態調査ができなかった点に不十分さを残している。河南省に関しては,今年度は予備調査の位置づけであったが,今後調査すべき対象が把握できたとともに,産地流通チャネルの多層化に関して新たに研究対象とすべき課題(茶産地流通の多層化)を見いだすことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
2016年度は,以下の点を中心に研究を推進する。 1.前年度に引き続き,中国における農産物流通に関する文献資料・統計資料を,中国サイドの研究協力者や神戸大学大学院農学研究科の中国人留学生の協力を得て収集し,検討する。その際に,資料等の翻訳は神戸大学大学院農学研究科の中国人留学生に依頼する。 2.前年度に引き続き,山東省の野菜産地における販売チャネル多層化とチャネル間関係の実態を把握するため,農民専業合作社,農産物卸売市場の調査を実施する。なお,実態調査には,通訳および調査補助者として神戸大学大学院農学研究科の中国人留学生が同行する。 3.河南省においては,引き続き卸売市場を中心とした産地流通チャネルについて調査するとともに,前年度の実態調査で見いだした茶の産地流通の多層化について,信陽市を事例に調査を行う。なお,実態調査には,通訳および調査補助者として神戸大学大学院農学研究科の中国人留学生が同行する。 4.産地流通チャネルと消費地流通チャネルの相互関係を明らかにするため,山東省および北京市のスーパーの調査の可能性を,中国農業大学,中国社会科学院,青島農業大学等の研究者の協力を得て検討し,調査が可能になった場合には実態調査を実施する。 5.本年度における研究成果を取りまとめ,学会等で発表するとともに,学会誌に論文を投稿する。
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Causes of Carryover |
当初計画をしていた山東省の農民専業合作社の調査が,調査日程上の事情により実施できなかったことによる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2016年度に実施する実態調査のなかで,未実施の調査内容を含めて実施する。
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