2019 Fiscal Year Annual Research Report
Moneylending by Landlords in Modern Japan, with a Focus on the Structure of Collateral and its Consequences
Project/Area Number |
15K07628
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Research Institution | Utsunomiya University |
Principal Investigator |
大栗 行昭 宇都宮大学, 農学部, 教授 (50160461)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 農史・農法比較 / 明治日本 / 地主農村金融 / 土地担保 / 産業組合 / 自治村落 |
Outline of Annual Research Achievements |
日本の地主は,松方財政期や日清戦争後の増税期などに農民の土地を買い集め,買入地の多く,特に松方財政期のそれは貸金の流地取得によるものであった.これは,地主制史研究では通説になっている.では逆に,地主の貸金はどのような性格をもち,どのような結果を生んだのか.これに対する答えはきわめて不十分である.地主は多様な農村金融(質入,書入などの担保金融,あるいは無担保による信用貸)を営んだが,それらがどのような性格を持ち,相互にどう関係し,どのような結果を生んだかは,煩瑣な資料解析が敬遠され,説得的な学説が存在しない.本研究は,各地に保存されている一次資料を利用して,地主金融の性格,これらの結果およびその変化を解明するものである. 平成28年度までの研究により,在村地主の存在の有無と農村内の金融のあり方との関係が新たな論点になると考えられた.そこで29年度以降,時代を明治後期(資本主義確立期)に移し,信用組合など産業組合の組織化と在村地主の関係を考察,あわせて初期の産業組合は藩政期の村を区域として成立したという自治村落論を検証してきた.今年度の研究により,初期産業組合の中で藩政村の組合は支配的でないことが明らかになった.注目されるのは複数の藩政村で構成された組合が最も多かったことで,村々をまとめたのは中小地主であることが示唆された.初期産業組合設立の実態からは,自治村落論は支持されないという結論を得た.
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