2015 Fiscal Year Research-status Report
食料と栄養の地球規模長期展望のための動的シミュレーション
Project/Area Number |
15K07639
|
Research Institution | Japan International Research Center for Agricultural Sciences |
Principal Investigator |
草野 栄一 国立研究開発法人国際農林水産業研究センター, 社会科学領域, 研究員 (00560187)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小山 修 国立研究開発法人国際農林水産業研究センター, その他部局等, その他 (50399367)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 食料需給予測 |
Outline of Annual Research Achievements |
気候変動の影響評価研究でしばしば用いられる共通社会経済シナリオ(SSP)や、定性的な手法によるシナリオ作成、長期食料需給予測に関する論文や報告書を収集した。また、米国の国際食糧政策研究所(IFPRI)やミズーリ大学、アーカンソー大学等を訪問し、食料需給予測の担当者等と打ち合わせを行うと共に、国内においても、農林水産政策研究所や国立環境研究所の専門家に聞き取りを行い、デルファイ法による予測シナリオ構築の妥当性、SSPの作成や食料需給予測への活用法、食料需給予測を栄養需給予測に拡張する際の問題点などについての情報を収集した。 これと並行して、食料・栄養需給予測を行う準備として、世界の国別・品目別の時系列の食料生産・消費・貿易や、年齢階層別人口、GDPなどの経済データなどをエクセルに入力した。また、予測された食料需給を栄養換算するため、品目ごとの栄養成分データを入力した。これらのデータは、主に国際連合食糧農業機関(FAO)のFAOSTATやFISHSTAT、国際通貨基金(IMF)、国際連合、米国農務省のウェブサイトなどから収集した。 エクセルに入力したデータを用いて、国別・品目別モデルのパラメータを推定するためのプログラムを作成した。入力したデータにはノイズが含まれるため、この影響を除くことができるロバスト推定によりパラメータを求めることとした。予備的な分析として、アフリカにおける国別のコメ生産の弾力性を推定し、コメ生産量の中期予測を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画時には、デルファイ法によってシナリオを構築する予定だったが、専門家への聞き取りを通して、シナリオ作成手法の新規性等の問題が指摘されたため、まずSSPなどを参考にした、定量的な手法に基づくシナリオ作成を優先することとした。このため、年齢階層別人口や出生・死亡・移動人口のデータを収集した。社会階層についての情報を加味するため、ジニ係数等のデータも収集した。 データをエクセルに入力したが、ファイルのサイズが大きく、操作が困難になった。このため、Rからデータにアクセスして、これを加工するためのプログラムを作成することで対応した。 アフリカのコメを対象とした予備的な分析の結果、食料需給予測で一般的に用いられる両対数型モデルでは、データの外れ値の影響を受けにくいロバスト回帰を用いても、予測値の指数的爆発が容易に生じ、長期予測が不可能になることが明らかになった。指数的爆発回避のため、一般的に食料需給モデルで用いられる関数形や予測手法を変更することで対応する予定である。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成27年度に明らかになったデルファイ法によるシナリオ作成の問題に対して、まず、ワークショップ等に基づくシナリオ作成の経験を持つ研究者等と打合せを行う。聞き取りに基づき、パイロット版のシナリオを作成する。また、定性的な手続きに基づき作成されたシナリオの、科学的な価値を高める手法について情報を収集する。 年齢階層の食料需給への影響を予測するため、年齢階層別人口予測モデルを開発する。また、予測モデルのパラメータとして利用するため、計量分析によって社会経済的要因の食料需給への影響を計測する。平成27年度に明らかになった予測値の指数的爆発の問題に対処するため、各要因の影響評価には、計量経済分析で一般的な両対数型以外のものも用いる。 食料需給データを栄養価に換算する。また、国別データを食料需給モデルに入力できる形に集約し、集約データのパラメータを推定するためのプログラムを作成する。集約データとパラメータ、及びパイロット版のシナリオを基に、栄養需給の予測を行う。
|
Causes of Carryover |
平成27年度に予定していた海外出張に、一部行くことができなかったため、次年度使用額が生じた。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度に、海外出張を行い調査を行うことで使用する。
|