2017 Fiscal Year Research-status Report
動物プランクトンおよび水生生物を利用した水田からのリン回収
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15K07642
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
花山 奨 山形大学, 農学部, 准教授 (20282246)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | リン溶出 / 藻類 / 紫外線 / 水生動物 / 田面水 |
Outline of Annual Research Achievements |
29年度は、紫外線および水生動物による摂食が、水田土壌から田面水へのリン溶出におよぼす影響について検討し、以下の成果を得た。 1)野外において、紫外線が水田土壌から田面水へのリン溶出におよぼす影響を、擬似水田を使って検証した。実験には、堆肥を連用した水田の湿潤表土を使用した。実験期間は、2017年5月11日から7月5日とした。擬似水田は、紫外線透過フィルムと不透過フィルムの下に設置した。結果、紫外線の有無によらず、田面水のDOは実験開始直後から実験終了時まで約10mg/L前後で推移した。pHは、5月29日以降から実験終了時まで9前後を維持した。実験開始から実験終了時の間における田面水の全リン濃度の増加量は、紫外線区で0.38±0.25mg/L、非紫外線区で0.50±0.25mg/Lとなり、有意な差はなかった。以上より、紫外線は、水田土壌から田面水へのリン溶出に影響をおよぼさないことが明らかとなった。 2)ヒメタニシの濾過・摂食にともなう藻類からのリン回帰に着目し、ヒメタニシがリン回帰におよぼす影響を調べた。ヒメタニシの濾過によるリン回帰に関する実験において、餌は、光合成細菌、ミドリムシ、クロレラを使用した。結果、濾過による各餌のリンの回帰率は、光合成細菌0.43、クロレラ0.22、ミドリムシ0.18となった。また、ヒメタニシの摂食の有無による土壌表面の付着藻類からのリン回帰速度を調べた。結果、ヒメタニシの摂食がないときのリン回帰速度に比べ、ヒメタニシの摂食によるリン回帰速度は、およそ1.7倍大きいことが示された。以上より、①ヒメタニシの濾過摂食によるリンの回帰は餌の種類に影響されること、②ヒメタニシの摂食はリンの回帰を促進させること、が明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの研究結果から、pHに依存した土壌から田面水へのリン溶出量は、少ないことが明らかになりつつある。リン回収の観点から、土壌から田面水へのリン溶出がより多くなることが望ましい。より多くのリンを溶出させる一つの方法として、藻類からのリン回帰があげられる。29年度の研究結果から、水生動物による藻類の摂食・排泄は、リン回帰量の増加に寄与することが示唆された。一方、紫外線による藻類の死滅分解にともなうリン回帰量の増加は、認められなかった。30年度においては、水生動物およびその他の環境要因が、藻類からのリン回帰におよぼす影響をさらに検討する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
30年度は、以下の課題に取り組む。 1)タニシおよびオタマジャクシによる付着藻類の摂食および排泄にともなうリン回帰について 30年度では、明暗条件でタニシに付着藻類を摂食させ、回帰したリンの形態について検証する。また、他の藻類摂食者として、オタマジャクシに注目し、オタマジャクシによるリン回帰能力についても検証する。 2)水温制御による付着藻類からのリン回帰について 田面水の温度は、水深によって大きく変化する。水深を浅くすることで、水温上昇にともなう藻類の死滅分解によるリン回帰におよぼす影響を検証する。
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