2015 Fiscal Year Research-status Report
渡鳥コハクチョウのもつ営農コスト削減ポテンシャルの検証と湖沼流域への負荷削減効果
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15K07647
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
宗村 広昭 島根大学, 生物資源科学部, 准教授 (90403443)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 冬期湛水水田 / コハクチョウ / 越冬 / 施肥削減 / 流域管理 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,コハクチョウの越冬が冬期湛水水田の田面水や土壌にどのような影響を与えるかを評価し,冬期湛水水田への施肥量削減の可能性を考察するとともに,流域全体での負荷量削減効果の検証を目的に研究を進めている. 2015年12月~2016年3月にかけて月2回,コハクチョウの日中行動パターンを観察し冬期湛水水田に滞在する個体数の把握を行った.その際,田面水を採水し,T-P,T-N,クロロフィルなどを分析した.また現地においてマルチ水質モニタリングシステム(HORIBA U-21XD)を用いてpH,電気伝導度(EC),溶存酸素(DO),水温などを測定した.さらに,冬期湛水水田と一般的な水田(冬期湛水されない水田)の土壌を,コハクチョウが帰郷した後(2015年5月)とコハクチョウが飛来する前の水稲収穫後(2015年10月)で採取・分析し,pH,EC,可給態リン酸,C/N比を比較した. コハクチョウの日中行動パターンを観察した結果,早朝7頃(目視可能な時間)では観測水田において合計1000羽弱の個体数を確認した.その後気温の上昇とともに周辺農地へ採餌のため移動し,夕方日没前後に徐々に対象水田へ戻ってくるパターンを把握した.コハクチョウは対象水田10枚に均等に滞在するのではなく水田による偏りがあった.10枚のうち2枚では一度もコハクチョウが確認されなかった.田面水の水質では,その2枚の水質濃度は他の水田と比べ低い傾向が見られた.また土壌分析の結果から,一般的な水田においては,コハクチョウ帰郷後と水稲収穫後で,pH,EC,可給態リン酸,C/N比の大きな変化は見られなかった.一方,冬期湛水水田においては,水稲収穫後よりコハクチョウ帰郷後の方がECは高く,C/N比が低くなった.これはコハクチョウの糞による窒素供給の影響と考えられる.しかし,可給態リン酸においては明確な差違は見られなかった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コハクチョウの流域内での行動範囲を把握するため衛星画像を利用する予定であったが,山陰地方は冬期に曇りの日が多く入手できていない.現在代替案を模索中であり,やや遅れていると判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
衛星画像は入手できなかったが,それ以外は順調に調査が進んでいる.水質分析は対象10水田で行えたが,土壌分析は2枚の水田でしか行っていない.今後は土壌分析の対象水田を10枚に増やし,コハクチョウの越冬による施肥効果のより詳細な検証を行う予定である.また土壌中に蓄積している栄養塩の起源を探り,コハクチョウからの影響を評価する予定である.
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Causes of Carryover |
コハクチョウの流域内での行動範囲を把握するため衛星画像を使用する予定であったが,天候の影響により出来なかった.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
引き続き衛星画像の利用を模索すると共に,ドローン等,他の方法によりコハクチョウの行動範囲の把握を行う.
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