2015 Fiscal Year Research-status Report
島嶼域における淡水レンズ地下水の塩水化とその回復に関する研究
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15K07659
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
石田 聡 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 農村工学研究部門地域資源工学研究領域, ユニット長 (30414444)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 地下水 / 淡水レンズ / 塩水化 / 回復 / 揚水 |
Outline of Annual Research Achievements |
淡水レンズの発生を室内で再現する実験装置を構築するため,幅2.2m,奥行き0.8m,高さ1.05mの模擬帯水層を大型実験水槽内に設け,豊浦砂を充填した。同時に実験装置内の360箇所に電気抵抗を測定するセンサーを配置し,一定時間間隔で抵抗値を自動で測定するシステムを作成した。作成した模擬帯水層を,両側の塩水貯留槽から供給される塩水で満たした後,塩水貯留槽の水位を一定に保ちながら,上部から降雨発生装置によって淡水(模擬降水)を供給した。実験中の模擬帯水層内の電気抵抗を測定した結果,模擬帯水層内の淡水域は,中心部が縁辺部に比べて厚い,下に凸のレンズ状を保ちつつ,下方に向かって徐々に拡大した。このことから本装置により淡水レンズの形成が可能であると見込まれた。測定システムで取得した模擬帯水層内の抵抗値分布は,採水によるEC測定結果と整合的であった。 実際に淡水レンズ地下水が利用されている沖縄県多良間島をモデル調査地に選定し、島内で水道水源として使われている揚水井近傍の観測孔(揚水井直近と一定の距離を置いた孔)を使用し,観測孔内の塩淡境界を挟む形で深度方向に複数の自記EC計(直径約30mmのデータロガー内蔵型)を設置した。アップコーニングの回復が顕著になる時期は5月上旬~6月末の梅雨時,および7月~10月の台風によってもたらされる集中豪雨時であり,短時間で塩淡境界が変化する可能性が高いのでデータ取得間隔は60分とした。併せて孔内の地下水位を同じ時間間隔で測定する設定とした。また,島内の地下水観測孔(約40孔)においてECの鉛直分布を携帯用測定器によって測定し,島全体の淡水レンズ形状を把握した。 淡水地下水の持続的利用可能量を推定するため,モデル調査地における地下水流動モデルの構築に着手した。使用するコードはSEAWATとし、既往調査結果(帯水層の透水係数,有効間隙率,ボーリング柱状図等)をデータ化してモデルに反映させた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度に予定してた室内実験、現地調査、モデル構築の準備とも、予定通り進捗したため。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はモデル調査地において前年度から継続している電気伝導度等の観測のデータを取得し,揚水井の稼働状況と対比し,揚水量に応じた電気伝導度の変化より,アップコーニングの動態を明らかにする。また,梅雨や台風通過時等の降雨状況と電気伝導度の変化を対比し,降雨とアップコーニングの回復についての関係を明らかにする。また必要に応じて観測箇所を追加し,電気伝導度深度別観測を継続する。 地下水流動モデルについては,現地で得られた測定結果を再現するように,透水係数・分散長などのモデルのパラメータをキャリブレートする。モデルのメッシュ区分はパーソナルコンピュータで非定常計算が可能な程度とし,現時点では1グリッドあたり横方向100~200m,縦方向数m程度を想定している。再現計算に用いる観測期間は平成26年10月から1年間とするが,この期間の降水量が極端に少なくなる可能性も考慮して,現地測定は研究期間中継続する。 研究実施者の構成については、平成26年度中に連携研究者の1人が異動となったため、平成27年度以降は新たに2人の連携研究者の協力を得て研究を実施する。
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Causes of Carryover |
本研究で使用している自記EC計は安価であるがこれまでの実績から一定の割合で故障(記録は正常に行われるがデータ通信ができないという症状)が発生していた。このため今年度予算としてデータ回収費を計上していたが、平成27年度は故障が発生しなかったため次年度使用額が生じた。故障が発生しなかった理由としては、平成27年度は大型の台風が調査地に接近しなかったためと考えられる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度発生した次年度使用額については、引き続きEC計のデータ回収費に充てることとする。翌年度予算として計上していたデータ回収費については旅費の一部に充て、連携研究者を1名増やし、現地観測態勢を充実させることとする。
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Research Products
(5 results)