2016 Fiscal Year Research-status Report
建築物緑化の環境改善能の定量と環境影響評価手法の確立
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15K07663
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
渡辺 均 千葉大学, 環境健康フィールド科学センター, 准教授 (80301092)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 建築物緑化 / 炭素固定能 / 炭素固定量 / 大気汚染物質 / シバ類 / 二酸化炭素削減効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
セダムは,乾燥条件下でCAM型光合成を示すが,一方で数種のセダムは湿潤条件下でC3型のガス交換を示す誘導型CAM植物と考えられている.これら生理的応答は,CO2固定能などの環境改善能に大きな影響を及ぼすものと考えられるが,屋上緑化において,それら生理的特徴と環境改善能の関係に関する研究は行われてこなかった. 本研究では,セダムを含む屋上緑化主要植栽植物の生理形態的特徴とCO2固定能を調査し,その関係性について数値化を試みた.その結果,湿潤かつ栄養条件に富んだ環境下において,広く用いられているセダム5種は,明期にC3型のガス交換を示し,他の緑化植物と同程度もしくはそれ以上の光合成速度および蒸散速度を示すことが明らかとなった.また,このような生理形態的応答により,閉鎖環境下 (湿潤かつ栄養条件に富んだ環境) では,セダム2種のCO2固定能はC4植物であるコウライシバよりも高い値を示した.これらのことから,セダムを植栽した屋上緑化は,湿潤かつ栄養条件に富んだ環境下において,C4植物を含む他の緑化植物を植栽した屋上緑化と同等の環境改善能を示すと考えられた. 一方で,現行の薄層型屋上緑化では,セダム2種はコウライシバよりも低いCO2固定能を示した.これは,貧栄養条件下における成長速度が暖地型シバの方が,セダムよりも高かったためと考えられた.これらのことから,暖地型シバがCO2固定能に優れる植栽植物であると考えられ,セダムは,灌水区と低頻度灌水区でCO2固定能および生理形態的特徴に違いがなかったことから,最低限の灌水管理で湿潤管理下と同等のCO2固定能が期待できると考えられた.また,セダムを植栽した屋上緑化のCO2固定能の向上のためには,灌水管理に加え,施肥管理を行うことが重要であることが示された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初,今年度中に完了させる予定であった大気汚染物質の分析に関しては,機器の不具合により,すべての分析項目を完了させることはできなかった.しかし,分析機器の部品類の交換,メンテナンス等はすべて終了しているため,研究期間内には完了することを見込んでいる. また,建築物緑化に用いられる資材等の製造時のCO2排出量についても,一部データの収集が終了していないが,こちらに関しても研究期間内に完了できる見込みである.
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Strategy for Future Research Activity |
建築物緑化の環境改善能の定量化を進めるため,窒素の動態や大気汚染物質の屋上緑化土壌中の蓄積量について,さらに詳細に研究を進めて行く予定である.様々な観点・尺度から建築物緑化における環境改善能の定量化をはかり,数値化を進めて行く予定である. 本研究の最終年度にあたるため,不足データを収集し,建築物緑化における総合的な環境影響評価手法の構築を目標に研究を進め,CO2 payback Time を算出する予定である.
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Research Products
(5 results)