2016 Fiscal Year Research-status Report
顕微分光画像解析による青果物鮮度劣化メカニズムの解明
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15K07666
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
黒木 信一郎 神戸大学, 農学研究科, 助教 (00420505)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 博通 神戸大学, 農学研究科, 准教授 (00258063)
中野 浩平 岐阜大学, 大学院連合農学研究科, 教授 (20303513)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 膜健全性 / ボイル-ファントホッフプロット / 細胞膜水伝導係数 / 平均破壊浸透圧 / 浸透圧非応答体積 / プロトプラスト単離 |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞膜の水透過性を指標とする鮮度評価理論の構築を目的として、本年度は、ホウレンソウ葉を対象に、プロトプラストの単離工程が細胞膜の健全性に与える影響、および細胞の浸透圧非応答体積が水伝導係数の同定に及ぼす影響を調査した。 0.5 mol/lのスクロース溶液にプロトプラストを懸濁させた同濃度のマンニトール溶液を積層して遠心する方法と、同濃度のスクロース溶液中にプロトプラストを懸濁し遠心する方法とでプロトプラストを精製し、平均破壊浸透圧およびその分散を測定した。その結果、前者のスクロース溶液とマンニトール溶液との間に挟まれる界面からプロトプラストを回収する密度勾配遠心法を用いた場合に、平均破壊浸透圧の分散が小さい、すなわちプロトプラスト間格差が小さい単離・精製が可能であることが明らかとなった。また、当該手法は、未消化組織や残滓が少なく、観察が容易なプロトプラスト懸濁液が得られるという点でも有利であった。 他方、細胞の浸透圧非応答体積を数値的に探索すると、浸透圧非応答体積の文献値を用いた場合と比較して、浸透圧差に対する細胞の体積応答関数のフィッティング精度が改善されることが示された。しかし、推定された浸透圧非応答体積の値は、不合理に小さい、または大きい場合があり、またボイル-ファントホッフプロットを線形回帰して求められる値と一致しなかった。これらの結果は、細胞の浸透圧調節機能が失われたこと、または細胞内への溶質の流入が起こったことを示唆していると考えられた。したがって、核磁気共鳴法を用いた細胞膜の透水係数との比較検討により、細胞膜水分伝導係数測定の数学モデルを再評価する必要があることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ミニマムダメージのプロトプラスト単離プロトコール開発が進展し、細胞膜の水透過性を多面的かつ高精度に評価できる状況にある。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画通り、細胞膜の化学的、力学的、分子生物学的性質の変化とその関係性の検討により、各種貯蔵温度およびガス環境が細胞膜の水透過性に与える影響を解明する。また、浸透透水係数と拡散透水係数の比較、および水移動の方向性(細胞内から細胞外、あるいは細胞外から細胞内)の比較により、細胞膜の水透過性に関するより詳細な知見を収集する。さらに、顕微分光画像計測により、青果物の細胞膜機能劣化に関する分光学的解釈について検討する。これらにより、鮮度劣化状態が段階的に異なる試料や、異なる産物間や品種間の貯蔵・流通特性について検討し、細胞膜の水透過性の観点からみた青果物鮮度劣化のメカニズムを解明する。
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Causes of Carryover |
顕微分光画像計測の実験系の確立において、価格と性能を満足する部品選定が難航しているため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
新製品を含めた対物レンズの性能評価を行い、最適な部品を調達する。これにより、顕微分光画像計測関連の実験系を確立する。
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