2016 Fiscal Year Research-status Report
余剰家畜バイオマス資源の藻類および菌類による再資源化
Project/Area Number |
15K07671
|
Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
皆川 秀夫 北里大学, 獣医学部, 准教授 (70146520)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | バイオマス / 余剰 / 家畜排泄物 / 藻類 / 菌類 / 再資源化 / タンパク質 / リグニン分解酵素 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、家畜排泄物の余剰問題を解決するため、家畜糞尿汚水を浄化し、これを浄化液として付加価値の高い藻類および菌類の培養を試み、余剰家畜バイオマス資源の再資源化の可能性を探ることを目的とする。 2年度(H28)は、1「浄化液のC/N比の向上と藻類・菌類の培養」、2「タンパク質の構造と機能」の2課題を検討した。 1「浄化液のC/N比の向上と藻類・菌類の培養」では、豚糞尿に比べ繊維質が多くC/N(炭素/窒素)比の向上が期待される牛糞尿を対象に、これを水道水で10倍に希釈し、微細気泡とオゾンガスとを併用した浄化装置を用いて曝気処理した。この浄化液を栄養源として藻類(クロレラ)と菌類(ヒラタケ、カワラタケ、シイタケ、サナギタケ)の液体培養を試み、豚糞尿の浄化液および人工栄養による液体培養と比較した。その結果、牛糞尿の浄化液のC/N比は8.9となり、豚糞尿の浄化液(0.79)では12倍、および人工栄養(1.9)では5倍と著しく向上した。クロレラを培養した結果、牛糞尿の浄化液は、豚糞尿の浄化液および人工栄養に比し、クロロフィルaの濃度がいずれも2.5倍となった。牛糞尿のCの増大効果が推定された。しかし、菌類の培養では、人工栄養ではいずれの菌種でも菌糸の生育が認められたが、牛糞尿および豚糞尿の浄化液ではとともに菌糸の生育は認められなかった。これは牛糞尿・豚糞尿の浄化液がいずれも、菌糸の生育に必須な何らかの微量要素が欠乏しているためと推定した。 2「タンパク質の構造と機能」では、昨年度(H27)、分子軌道法(MO)による菌類のリグニン分解酵素の解明を試みたが、酵素(タンパク質)のより基本的な機能を探る必要から今年度(H28)は、分子動力学法(MD)を用いて、リガンドとタンパク質とのポテンシャルエネルギ-の関係、並びにタンパク質同士の相互作用を検討し、基礎的知見を得た。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2年度(H28)の目標はほぼ達成したと判断するが、予想されなかった問題として,牛糞尿から調整した浄化液は、豚糞尿からの浄化水に比べ、そのC/N(炭素/窒素)比が8.9と高いにもかかわらず、豚糞尿の浄化水とともに、菌類の液体培養ができなかった。 この理由として、菌類に特有な微量要素の欠乏が考えられ、最終年度で解決すべき課題となった。
|
Strategy for Future Research Activity |
最終年度(H29)の計画として、1「藻類・菌類の追試験」を行うとともに、2「菌類の植物細胞壁分解酵素(リグニン分解酵素・セルロース分解酵素)の構造解析」をそれぞれ次のように行う。 1「藻類・菌類の追試験」: 過去2年の成果のうち不足する藻類・菌類の追試験を実施する。 2「タンパク質の意義と構造解析」: 酵素類をはじめタンパク質は生命体の基礎物質であり、この理解なくして農学や環境科学の革新は望めない。そこで、これまでの成果を踏まえ、とくに家畜糞から抽出した菌類の植物細胞壁分解酵素(リグニン分解酵素・セルロース分解酵素)について、それらタンパク質の構造と機能の基本的知見をPCコンピュータで探る。
|
Causes of Carryover |
リース契約で使用した「浄化装置」の保守点検費用としていたが、その必要性がなかったたため、残金が生じた。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の保守点検費用に繰り入れる。
|
Research Products
(4 results)