2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K07712
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
朝隈 貞樹 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 北海道農業研究センター・酪農研究領域, 主任研究員 (50374773)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 牛乳 / 脂肪酸 / 官能評価 / 香気成分 / 味センサ |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は初年度であることから、(1)分析型パネリストの選抜試験、(2)分析型パネリストによる飼養形態の異なる官能評価試験および(3)官能評価に用いた牛乳中の脂肪酸分析について実施した。 (1)分析型パネリストについては、一般社団法人日本乳業協会が示す『実践官能評価法』に準じて実施した五味識別試験および濃度差識別試験の両方に合格した19名を分析型パネリストとした。(2)官能評価は、放牧飼養乳3種 (濃厚飼料無給与放牧農家:A、濃厚飼料併給放牧農家:B,C※放牧依存度B>C) と非放牧飼養乳1種 (舎飼い飼養農家:D) をHTST殺菌 (72℃15秒間) した牛乳を用い、分析型パネリストによる順位法および3点識別法を用いて嗜好性や識別に関する評価を行った。本研究成果から、放牧草摂取量の異なる飼養形態で生産される牛乳の評価としては、その摂取割合が必ずしも嗜好性に悪影響を及ぼすことはないことが示唆された。また、3点識別法の結果から4種類の牛乳が、分析型パネリストによりそれぞれ識別できる違いがあることも併せて示唆された。すなわち、飼養形態(エサ)が異なる牛乳の識別はされているが、好みに影響するものではないという結果が得られた。(3)官能評価に用いた牛乳について、一般成分、脂肪酸、香気成分、味センサ値など計125成分をそれぞれの方法で測定し、この測定結果が飼養条件(今回は放牧草摂取割合を独率変数とした)にどのように影響しているか各種成分を説明変数としてOPLS回帰分析を行った。その結果、とくに脂肪酸組成による回帰は、全ての成分(125成分)を説明変数とするよりもあてはまりが良いことが明らかになり、放牧草摂取との関係性が考えられる新たな脂肪酸が存在する可能性も明らかになった。今後は官能評価の設計を修正し例数を増やすことで、官能評価と新たな脂肪酸を中心とした化学分析値の関係について検討する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、五味識別試験および濃度差識別試験による分析型パネリストの選抜を行い、19名が合格し、本年度の牛乳の官能評価試験を行った。牛乳の比較および例数を増やすことが難しいため、次年度は官能評価試験についてパネリストの負担を軽減するような修正行う必要はあるが、OPLS回帰分析により飼養条件(放牧草摂取割合)と乳中脂肪酸と関係性の高い牛乳を用いることが出来ており、基本的には本年度の成績を活用して、例数を増やすことと官能評価と脂肪酸を中心とした乳成分の関係性を明らかにするための試験設計が焦点となる。また、官能評価で用いた放牧草摂取割合の異なる牛乳の脂肪酸分析を同時に行ったところ、特徴的な脂肪酸が牛乳に出現することが明らかとなり、この脂肪酸についても分析を進めていきたいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
官能評価については、測定する乳中脂肪酸を主として、評価との結びつきが可能な試験設計に修正する必要がある。これにより分析型、嗜好型パネリストの負担を軽減しつつ、例数を増やし、牛乳中の官能評価に影響を及ぼす脂肪酸を探索していく。また、新規に発見された脂肪酸についても、放牧草摂取により増加することが明らかとなっており、これについて官能評価との関係性も含め研究を進める。
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Causes of Carryover |
従来必要となる消耗品費が抑えられたため
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度研究成果として放牧飼養により牛乳中で増加する新たな脂肪酸が明らかになった。次年度以降、当初計画と平行してこの脂肪酸の詳細な分析を行う予定であり、これら分析の際に必要となる消耗品費として利用する。
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