2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K07712
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
朝隈 貞樹 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 北海道農業研究センター 酪農研究領域, 主任研究員 (50374773)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 牛乳 / 脂肪酸 / 官能評価 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、前年の分析型パネリストの結果から、嗜好型パネリストでの官能評価試験を実施すると共に、放牧草摂取依存的な変化を示す脂肪酸についても同試験で用いた牛乳サンプルについて測定を行った。 同時期にサンプリングした放牧飼養乳3種 (濃厚飼料無給与放牧:A、濃厚飼料併給放牧:B,C※放牧依存度A>B>C) と非放牧飼養乳1種 (D) を高温殺菌処理(HTST,72℃15秒)および均質化と超高温殺菌処理(UHT,120℃2秒)した牛乳を用い、嗜好型パネリストにより順位法で官能評価試験を行った。得られた嗜好性順位を正規スコアに変換し、分散分析および多重検定を行った。また、これら牛乳中の脂肪酸についても分析を行った。UHT処理乳に関しては保存期間が長くなることから、保存期間の影響についても検討した。 HTST処理乳については、7月と9月に実施したが、2つの時期における官能評価試験の結果は、放牧依存度の高さが必ずしも嗜好性に影響しないという昨年度の成果が嗜好性パネリストにおいても確認された。一方、7月と9月で順位付けが異なる結果となっており、季節における評価の変化が見られた。 UHT処理乳については、UHT処理後5日経過した牛乳の官能評価では、放牧依存度の低いC乳および非放牧飼養であるD乳が有意に高い評価を得た。これに対してUHT処理後12日目における官能評価では、C乳が引き続き有意に高い評価を得たが、D乳は大きくスコアを下げ、放牧依存度の高いAおよびB乳はスコアを上げる結果となり、保存期間の経過により嗜好性スコアの差が縮まった。 これらの原料乳について脂肪酸濃度の分析を行ったところ、サンプル数は少ないが、放牧草摂取依存的な変化を示した新たな脂肪酸の増加が昨年同様見られ、また従来より報告されている共役リノール酸などについても増加していた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、昨年度は分析型パネリスト、本年度は嗜好型パネリストを用いて評価することで研究成果を一般化する予定であり、いずれの試験についても50名以上の被験者を集めて実施できた。一方、例年になく台風などの影響から飼料構成について7月と9月で異なっており、想定していた以上に乳牛の放牧草摂取量と牛乳に対する評価が一定にならない傾向が見られた。また官能評価データに関しては順調に増えているが、これと結び付けるための牛乳サンプルは官能評価1回につき1サンプルとなるため、サンプル数が少ない。最終年次はは、化学分析値を増やすための嗜好型官能評価試験を実施するなどして、足りないデータを補完する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで順位法による官能評価を実施してきたが、研究の発展を考えると、基準を設けた尺度法による評価も検討する必要がある。このため最終年度は、これまでの牛乳サンプルから脂肪酸を中心とした化学成分分析を行うとともに、食味評価に至るプロセスが明確になるように尺度法による官能評価データの取得にも努める。また、昨年度報告した放牧草摂取割合に依存して増加する脂肪酸はもとより、穀物系飼料により牛乳中に増加すると考えられる脂肪酸についても分析法の検討および定量を行い、これを併せて脂肪酸と官能評価の関係について検討する。
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Causes of Carryover |
本年度も前年同様、官能評価に用いた牛乳については、その加工処理をよつ葉乳業(株)中央研究所の協力により行った。また、官能評価試験について、よつ葉乳業所属の職員にも参加してもらうことで、経費の節減をおこなったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
最終年度となり、新たに穀物系飼料に由来するヒドロキシル化脂肪酸の分析を行うための消耗品費に使用する。
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