2015 Fiscal Year Research-status Report
細胞の狂犬病ウイルス感受性を規定する新規宿主因子の同定と機能解析
Project/Area Number |
15K07716
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
佐々木 道仁 北海道大学, 人獣共通感染症リサーチセンター, 特任助教 (70609403)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 狂犬病ウイルス / 宿主因子 / 網羅的解析 / RNAi |
Outline of Annual Research Achievements |
狂犬病の病原性を規定する宿主因子の研究は進んでおらず、狂犬病ウイルス感染機構や病原性発現機構は未解明な点が多い。これまでに、ヒトsiRNAライブラリーを用いたハイスループットスクリーニングを実施し、狂犬病ウイルス感染に関与する可能性がある宿主遺伝子を250個抽出している。 平成27年度はsiRNAライブラリーを用いた2次スクリーニングを行い、これらの遺伝子の更なる絞り込みを実施した。ヒト神経系培養細胞株SK-N-SHにsiRNAを導入後、狂犬病ウイルスを接種し、遺伝子ノックダウンにより感染細胞数が変化する遺伝子のスクリーニングを実施した。3回の繰り返し実験で再現性が得られた28個の遺伝子を狂犬病ウイルス感染に関与する宿主因子として同定した。また、siRNA導入による細胞毒性を細胞のATP量を定量することで評価し、遺伝子ノックダウンによる細胞毒性が生じていないことを確認した。 同定した遺伝子の中に含まれていた転写関連因子Xについて機能解析を実施した。遺伝子Xのノックダウンにより、細胞の狂犬病ウイルス感受性が減少し、上清の子孫ウイルス量が減少した。また、Xの転写産物と狂犬病ウイルスNタンパクの結合を共免疫沈降法により検出した。さらに、狂犬病ウイルス感染時にXのリン酸化修飾が誘導されること、Xのリン酸化修飾を阻害する薬剤で細胞を処理すると狂犬病ウイルス感染が阻害されることが明らかとなった。以上の結果から、宿主の転写関連因子Xは狂犬病ウイルスNタンパクと相互作用し、自身のリン酸化修飾を通じて狂犬病ウイルス感染をサポートする宿主因子であることが示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度はsiRNAライブラリーの2次スクリーニングと同定遺伝子の機能解析を開始することを計画していた。siRNAライブラリーの2次スクリーニングは予定通り完了し、28個の遺伝子を同定できた。同定遺伝子の機能解析も宿主の転写関連因子Xについて実施し、一定の成果を得た。 以上のように、本研究課題は研究実施計画通りに進捗しており、得られた結果から今後の進展も期待できるものである。
|
Strategy for Future Research Activity |
当初の研究実施計画通り、スクリーニングにより同定した遺伝子の機能解析を実施する。平成27年度に機能解析を開始した転写関連因子Xのより詳細な解析の実施と共に、他の同定遺伝子についても機能解析を開始する。
|
Causes of Carryover |
研究開始初年度は研究立ち上げのため、次年度以降に比べて多くの金額を請求していたが、経費節減に勤めたため使用残が生じた。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度末から平成28年度にかけて途切れなく研究を進めており、既に使用残の多くは研究に必要な消耗品の購入に充てている。残額も研究に必要な消耗品の購入に使用する。
|