2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K07719
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
古谷 哲也 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (60647676)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ネコモルビリウイルス / 病原性 / 腎臓疾患 / 遺伝子発現制御 / 免疫染色 / 組織切片 / 血清検査 |
Outline of Annual Research Achievements |
腎臓病ネコの腎臓固定病理切片による研究について、東京農工大学 町田登教授の協力により検体を提供いただき、各切片のHE染色スライドの詳細な観察と、切片から抽出したネコモルビリウイルス(FeMV)の検出、さらに、抗-N蛋白抗体、抗-P蛋白抗体による免疫染色を行い、切片における病変とウイルス核酸、ウイルス抗原の存在の関係を研究した結果、ウイルス感染と腎臓病変に顕著な関係が見られた。また、FeMV感染による遺伝子発現制御を確かめるため、免疫染色した腎臓組織から、マイクロダイセクションによって感染細胞と非感染細胞を切り出し、それぞれの宿主細胞から抽出したmRNAにより、定量PCRを行い、液性免疫因子の遺伝子発現の差を求めた。その結果、現在までにIFNg を始めとする、いくつかのサイトカイン遺伝子の抑制が見られている。また、組み換えFeMV P蛋白質を大腸菌によって発現・精製し、それによってウサギを免疫して抗-FeMV特異抗体を作製するとともに、抗-FeMV抗体検出ELISAを作製し、日本のネコ血漿中の抗体を検出したところ、全体の22 %のネコに抗体が検出された。また、良く分かっていないFeMVの病原性を知るため、ネコ患者の尿検体より、FeMVのウイルス分離を行い、現在まで、最低でも3株の追加FeMV株が分離された。ウイルス分離過程において、FeMV感染による細胞変性(CPE)が、これまで報告されてきた巨細胞を呈するものではなく、細胞死によるものであることが判明し、このため、多くのウイルス感染細胞が長期の培養においては細胞死によってウイルス感染の消失が見られることが分かった。このため、抗-ウイルス蛋白抗体によるモニターによる感染細胞の維持が必須であることが分かった。この分離株を用い、次年度は組織培養細胞や実験動物を用いて、感染モデルの構築を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
FeMV陽性ネコ尿検体からのウイルス分離について、当初分離を試みたウイルス株について、培養細胞による増殖に問題が見つかったため、新たな尿検体より分離を試みた。その結果、抗-N蛋白抗体を用いたIFAにより、少なくとも3株の新たなFeMVの分離が確認され、上清による感染も確認された。これらを用いて、当初予定していた、FeMV株の培養細胞感染における性状解析を現在推進中である。ウイルス分離過程において、FeMV感染による細胞変性(CPE)が、これまで報告されてきた巨細胞を呈するものではなく、細胞死によるものであることが判明し、このため、多くのウイルス感染細胞が長期の培養においては細胞死によってウイルス感染の消失が見られることが分かった。このため、抗-ウイルス蛋白抗体によるモニターによる感染細胞の維持が必須であることが分かった。また、これらの株により、次年度はマウスにおける実験感染モデルの作製を行う。FeMV腎臓病ネコの腎臓固定病理切片による研究については、東京農工大学 町田登教授の協力により検体の提供により、当初予定していた、FeMV感染と病変の相関が確認された。抗-FeMV特異抗体の作製は、組み換え大腸菌発現による精製P-蛋白質による抗体を作製し、精製蛋白質を用いた抗体検出ELISAの作製と、日本のネコ患者血漿における特異抗体の検出を行った。次年度は、ネコSLAM強制発現培養細胞によるFeMV感染増強の有無を確認する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
FeMV株の分離について、感染細胞での増殖が見られないという問題が生じたが、新たなFeMV陽性尿検体からウイルス株の分離を行った結果、FeMV感染による細胞変性(CPE)が、これまで報告されてきた巨細胞を呈するものではなく、細胞死によるものであることが判明し、このため、多くのウイルス感染細胞が長期の培養においては細胞死によってウイルス感染の消失が見られることが分かった。このため、抗-ウイルス蛋白抗体によるモニターによる感染細胞の維持を行う事で、問題が解決された。次年度は、マウスにおける実験感染のよる、感染モデルの作製を目指す。また、FeMV感染ネコの腎臓組織から抽出したmRNAを用いた次世代シークエンスを行い、FeMV感染による、感染細胞における液性免疫因子の遺伝子発現制御についての知見を得る。それ以外については、当初予定していた研究計画に沿い、研究を行っていく予定である。
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Research Products
(8 results)