2015 Fiscal Year Research-status Report
遺伝子操作による狂犬病生ワクチンの安全性の向上と免疫効果の増強
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15K07720
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
伊藤 直人 岐阜大学, 応用生物科学部, 准教授 (20334922)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 狂犬病 / ワクチン / 遺伝子操作 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、経口狂犬病生ワクチン株のERA株の遺伝子操作により、高い安全性と免疫効果を有する新しい生ワクチン候補株を作出することである。現行の経口生ワクチンに含まれるSAG2株は、G蛋白質333位における1アミノ酸変異(Glu)によって弱毒化されている。このGluが強毒型のArgに変異するには2塩基置換が必要となるのに対し、同じく強毒型のLysには1塩基置換によって変異する。このことは、SAG2株が潜在的な安全性の問題を有していることを示している。本年度は、強毒型のArgおよびLysに変異するために、いずれも2塩基置換が必要となるように、G蛋白質333位にLeuを保有する弱毒型ERA変異株(ERA-G333Leu株)の作出を試みた。 ERA株の遺伝子操作系を用いて、ERA-G333Leu株の作出に成功した。ワクチン製造に広く使用されているVero細胞における本株の増殖性を検討した結果、本株は親株のERA株と同様の効率で増殖することが明らかとなった。さらに、6週齢マウスを用いた脳内接種によりERA-G333Leu株の残存病原性の程度を確認したところ、ERA株感染マウスがすべて死亡したのに対し、ERA-G333Leu株感染マウスは症状を示すことなくすべて生存した。以上の成績より、ERA-G333Leu株が高い生産性および安全性を有していることが確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記の「研究実績の概要」が示すとおり、本年度は、ERA-G333Leu株の作出に成功した上、本株の高い生産性と安全性を確認することができた。したがって、本研究は、現在に至るまで、当初の計画どおり進行していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、哺乳マウス連続脳継代法を用いて、ERA-G333Leu株の弱毒性状の安定性を検討する。さらに、マウスに筋肉内接種することで本株の免疫効果についても評価する。一方、生ワクチン株の安全性の向上により、その免疫原性が犠牲となることが予想される。そこで免疫誘導の主役を担うG蛋白質を高発現するERA-G333Leu株を作出する予定である。当初の計画に基づき、G遺伝子のコドンを哺乳類細胞に最適化することで、G蛋白質の高発現化を試みる。
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