2015 Fiscal Year Research-status Report
低酸素誘導因子阻害薬は犬リンパ腫治療の切り札となり得るか?-癌幹細胞に着目して-
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15K07744
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
奥田 優 山口大学, 共同獣医学部, 教授 (10325243)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 犬 / リンパ腫 / 治療 / 低酸素誘導因子 / 抗がん剤 |
Outline of Annual Research Achievements |
低酸素誘導因子(HIF)は腫瘍における低酸素と悪性度の増加に関与するキーレギュレーターであると考えられており、さらにHIF-1αのトランスジェニックマウスがリンパ増殖性疾患を発症しやすいという報告から、リンパ腫の増殖・維持メカニズムとの関連が示唆されている。また、HIF-1α阻害剤や遺伝子ノックダウンは、epilepsy, progressive myoclonus type 2A遺伝子を抑制されたマウスで発生するリンパ腫、および人の白血病症例から分離された腫瘍細胞で細胞死を引き起こすことから、リンパ系腫瘍に対する治療の標的としての可能性が示されている。本研究では犬リンパ腫細胞におけるHIF-1αの発現を解析し,その阻害薬が治療に有効であるかを明らかとすることを目的とする。 本年度、犬リンパ腫細胞におけるHIF-1α発現とその阻害による効果をin vitroで解析した。今回用いた犬のリンパ腫細胞株およびリンパ腫症例サンプルの全てにおいて、HIF-1αmRNAと蛋白の発現が確認された。一方、健常犬のリンパ系組織では、その発現は認められなかった。さらに転写因子HIF-1αの標的遺伝子であるglucose transporter (GLUT)1遺伝子の発現も犬リンパ腫細胞株で確認された。さらに、3種のHIF-1α阻害剤 (echinomycin, YC-1, 2-methoxyestradiol) を添加したところ、全ての細胞株で増殖抑制作用があることが確認された。 以上の結果は,犬リンパ腫細胞においてHIF-1αの発現が腫瘍細胞の維持と増殖に重要な可能性を示唆しており,HIF-1αの阻害が犬リンパ腫における腫瘍治療のターゲットとなり得ることを示している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予想通り,犬リンパ腫細胞においてHIF-1αの発現が重要であることが明らかとなり,その阻害剤が治療薬として有用である可能性が明らかとなった。 一方,幹細胞の同定に関しては,予備実験で幹細胞性を示す細胞集団が認められなかった。これには動物間種差による抗体の反応性や幹細胞に発現する表面抗原の違いがあるためと思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
免疫不全マウスを用いたex vivoでHIF-1α阻害薬の効果を検討する予定である。 また,幹細胞の同定についても検討を続けるが,結果が得られない可能性も危惧されるため,犬リンパ腫細胞に対する抗がん剤と薬剤耐性についても研究を進めていく予定である。
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Causes of Carryover |
予備実験において幹細胞と思われる細胞を得ることが出来なかったため,抗体等購入を見合わせたことによる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
前年度購入できなかった幹細胞同定に関わる抗体を購入するとともに,新たなアプローチとして抗がん剤耐性に関わる分子に対する抗体の購入を中心に使用予定である。
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