2016 Fiscal Year Research-status Report
遺伝子挿入のない安全なイヌ・ネコiPS細胞を用いた赤血球分化誘導の検討
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15K07747
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
鳩谷 晋吾 大阪府立大学, 生命環境科学研究科, 准教授 (40453138)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
杉浦 喜久弥 大阪府立大学, 生命環境科学研究科, 准教授 (30171143)
竹中 重雄 大阪府立大学, 生命環境科学研究科, 准教授 (10280067)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | iPS細胞 / センダイウイルスベクター / イヌ / ネコ / 再生医療 / 再生獣医療 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年までに、細胞質内で遺伝子を発現して染色体を傷つけないより安全なベクターとされているセンダイウイルスベクター(SeVdp)を用い、イヌとネコのiPS様細胞コロニーを得ることに成功したが、その作製効率は低く、SeVdpの除去もできていない。そのため、本年度はiPS細胞コロニー形成の効率化およびSeVdpの除去を試みた。その結果、以下のような結果が出ている。 ①ネコ胎子線維芽細胞にSeVdpを用いて、多能性関連遺伝子であるヒトOCT3/4、SOX2、KLF4およびc-MYCの4因子を導入後、フィーダー上に播種し、ヒト胚性幹細胞培地を用いて培養した。その結果、扁平型の形態を示すiPS細胞様コロニーが出現した。得られた細胞は、30継代以上の長期継代が可能であり、各種未分化マーカーは陽性であった。さらに浮遊培養によって胚様体を形成し、その後の接着培養で三胚葉マーカーに陽性を示すと共に、一部の細胞は拍動する心筋細胞へ分化した。siRNA処理によるSeVdp除去を確認できたが、除去後の細胞は、長期間継代培養することができなかった。 ②上記の方法では、ネコiPS様細胞コロニーの作製効率が低いため、SeVdpを感染させた細胞にTGFβ阻害剤を添加すると、その作製効率は有意に増加することがわかった。 ③イヌ胎子線維芽細胞に同様にSeVdpを用いて遺伝子導入することで、ヒトiPS細胞の類似した細胞コロニーが得られた。この細胞は、各種未分化マーカーに陽性を示した。また、ネコと同様にTGFβ阻害剤を添加すると、その作製効率は有意に増加することがわかった。さらに、一部のイヌiPS様細胞はウイルスの除去が可能であったが、その後、イヌiPS細胞の培養維持が難しくなった。 以上のことから、イヌおよびネコにおいて、効果的にiPS様細胞のコロニー形成ができるようになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
センダイウイルスベクター(SeVdp)を用い、イヌとネコのiPS細胞の作製に取り組み、効率的にiPS細胞コロニーを形成できるようになった。また、これらの細胞は、未分化であり、各種細胞へ分化できることがわかった。さらに、イヌおよびネコiPS様細胞からSeVdpを除去できることがわかった。 しかしながら、SeVdp除去後に各細胞を安定的に培養できておらず、やや遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
さらに、iPS細胞の作製効率改善を図るため、導入する遺伝子数の検討を行う。また、SeVdp除去後に長期培養が可能となるように、シグナル活性化因子や阻害因子などの低分子化合物や各種のサイトカインを検討する。 さらに、iPS細胞から各種血液細胞へ分化させるための検討も始める。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由としては、iPS細胞からセンダイウイルスを除去後、iPS細胞を大量培養し、さらに血液細胞に分化させる研究をする予定であったが、当該年度までには、大量培養研究まで進まなかったためである。特に、iPS細胞培養には、培養用のプラスティック製品や、サイトカイン、低分子化合物など高価な試薬が多いため、次年度でこれらの購入を考えている。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は、iPS細胞の大量培養および血液細胞への分化誘導を行う予定である。これらの研究では、培地に添加するためのサイトカインや、分化細胞の性質をしらべるための抗体などが多数必要となる。そのため、これらの試薬の購入に多くの研究費を使用する。 さらに、得られた研究成果は学会等で積極的に発表するため、旅費としても一部使用する。
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Research Products
(8 results)