2017 Fiscal Year Research-status Report
乳牛群の潜在性2型ケトーシスに対する実践的早期対策と臨床獣医師の予防意識調査
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15K07750
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Research Institution | Rakuno Gakuen University |
Principal Investigator |
及川 伸 酪農学園大学, 獣医学群, 教授 (40295895)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 乳牛 / 潜在性ケトーシス / βーヒドロキシ酪酸 / 対策 |
Outline of Annual Research Achievements |
H27とH28年度の試験より、潜在性ケトーシス(SCK)牛に対する分娩後初期での早期薬剤投与と分娩前の予防的薬剤投与が乳生産量の増加に有効である可能性が示された。H29年度は以下について検討された。 SCK対策の費用対効果:1)分娩後初期の早期投与効果についてH27年度の試験結果が分析された。SCKに対するプロピレングリコール群(PG、16頭)と消化機能障害治療剤群(GDT、10頭)および健康対照群(10頭)が比較された。4%脂肪補正乳量において、平均で対照群よりもPG群で89kg(8,900円、100円/生乳kg)、GDT群で658kg(65,800円)多かった(便益)。薬剤経費(費用)はPG群で2,000円、GDT群で7,200円であった。費用便益比は、PG群=1:4.5、GDT群=1:9.1と推定され、各対策が有効である可能性が示唆された。2)分娩前の予防的対策としてH28年度の試験結果を分析した。薬剤はプロピレングリコールとし、短期投与群(7頭、平均投与期間3.7日、PG740円)、長期投与群(5頭、10.8日、PG2,160円)および無投与対照群(11頭)を比較した。100日実測乳量は、平均で対照群と比べて短期投与群、長期投与群でそれぞれ41kg(4,100円)と733kg(73,300円)多かった。費用便益比は、短期投与群=1:5.5、長期投与群=1:33.9となり後者の有効性が示唆された。また、投与群では分娩後の初回授精までの日数も早い傾向が見られた。 潜在性2型ケトーシス予防に対するアンケート調査:アンケートの内容については、研究協力者と協議し作成した。大動物臨床研究会および日本家畜臨床学会の会員約900名を対象に実施さえれた。アンケート用紙は会報に同封し、料金後納の郵送にて回収する方式を用いた。2018年4月末日までの締切とした(現在回収中)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
H29年度の課題として産業動物獣医師への予防に関する意識調査が予定されていた。関連の研究会に協力依頼し、アンケートを会報と一緒に送付、回収する計画であったが、対象者を目標の1,000名に近づけるために研究会および出版会社との調整に時間を要してしまい、アンケートはH29年12月発送の会報に同封された。出来るだけ回収率を上げるために回収時期の延期を願い補助金事業期間延長承認申請を提出した(現在回収中)。 また、これまでの研究結果よりSCK牛への対策で乳生産の増加が認められている。その要因として、ルーメン環境の変化が推察されたことから、検証実験として、各薬剤のルーメン発酵における効果についてin vitroで検討をすることを計画している。
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Strategy for Future Research Activity |
1.潜在性2型ケトーシス牛(SCK)の実践的早期対策の実証:上述のとおり、SCK牛への対策において一定の成果が確認さており、H30年度はデータを再度精査する。 2.投与薬剤がルーメン内における消化および発酵産物に及ぼす影響:SCK対策の実証はフィールドスタディでもあることから、これ以上規模を拡大して実施することは実際の現場では人的問題、畜舎の問題から対応が難しいと判断された。一方、本対策によって乳生産が増加したが、その原因として、ルーメン発酵が円滑に進んだためであると推察された。そこで、実践的早期対策における効果の裏付け実験として、薬剤のルーメン内における影響について、in vitroで検討すること計画している。すなわち、乳牛からルーメン液を採取、培養し、泌乳期用TMRを基質として、各種投与薬剤を添加した条件で、6時間または24時間培養し、培養後の培養液および基質の残存量を測定する。測定項目としては、乾物消化率、ガス発生量、培養液中(pH、VFA)を検討する。 3.臨床獣医師の潜在性2型ケトーシス予防に対する取り組みアンケート調査:アンケートを回収し、分析する。 *なお、データの最終分析では、国内はもとより海外の研究協力者と協議しながら進める予定である。
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Causes of Carryover |
H30年度は、昨年度から継続している「アンケート調査」についてまとめる。また、「SCKに対する実践的早期対策」の結果を推論するための裏付け実験として、上述のように「投与薬剤がルーメン内における消化および発酵産物に及ぼす影響」について検討することから、以下の項目に関して研究費を使用する計画である。すなわち、検査関係(実験資材、血液検査等)、データ検討および研究情報収集関係(国内および海外出張等)、データ分析関係等およびその他(論文作成等)である。
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Research Products
(1 results)