Study on mechanisms of blastocyst activation induced by uterine-derived factors

2016 Fiscal Year Research-status Report

• Project/Area Number: 15K07767
• Research Institution: University of the Ryukyus
• Principal Investigator: 金野 俊洋 琉球大学, 農学部, 准教授 (60568260)
• Project Period (FY): 2015-04-01 – 2018-03-31
• Keywords: 胚盤胞活性化 / 着床 / 子宮 / エストロゲン / 細胞内シグナリング

Outline of Annual Research Achievements

胚着床は、胚盤胞の活性化と子宮の胚受容能獲得の高度な調節を伴う真獣類にとって重要な生命現象であるが、この胚・子宮間の同調に介在する機序は不明である。本研究はマウスを用いて胚盤胞の活性化を誘導する子宮由来因子を同定することを目的としている。我々はH27年度に遺伝子発現データベースのバイオインフォマティックス解析と胚盤胞の体外培養系を用いた胚盤胞接着能活性化モデルの解析を行い、胚盤胞の活性化を誘導し得る着床期特異的子宮由来シグナル因子候補として20遺伝子を抽出するとともに、エストロゲン依存的に着床期子宮内膜腺より分泌されるオステオポンチン(osteopontin, OPN)が胚盤胞のfocal adhesion kinase (FAK)を介してその下流シグナリング、すなわちMAPKおよびPI3K/AKTシグナリング経路を活性化することを明らかにした。平成28年度は、バイオインフォマティックス解析により得た着床期特異的な胚盤胞活性化の子宮由来シグナル因子候補の子宮における発現を、妊娠3.5および4.5日齢ならびにエストロゲン受容体を阻害した妊娠4.5日齢の子宮を用いて定量的RT-PCR法と免疫組織化学法により検証し、現在までにCXCL14がエストロゲン依存的に子宮内膜腺上皮において発現していることを明らかにした。また、胚盤胞の体外培養モデルの解析により、胚盤胞の内部細胞塊より産生されるFGF4は、OPNにより活性化するFAK下流シグナリングのうちAKTのリン酸化を阻害することが明らかになった。一方で、胚盤胞の栄養外胚葉細胞の増殖は時間の経過とともに減少し、胚盤胞の接着能を誘導するOPNは栄養外胚葉細胞の増殖には影響しなかった。

Current Status of Research Progress

3: Progress in research has been slightly delayed.

Reason

平成28年度は、バイオインフォマティックス解析により得られた胚盤胞活性化を誘導する子宮由来シグナル因子候補をマウス子宮から抽出したmRNAを用いて検証した。しかし、バイオインフォマティックス解析により得られた候補因子にはその発現がユビキタスであるもの、例えば血球細胞からの発現が知られているものなどが多く含まれており、子宮の組織片から抽出したmRNAの解析ではその発現の時期特異性やエストロゲン依存性を検証することが困難であり、組織切片を用いたin situでの解析法を導入する必要が生じた。また、これまでに得られたデータからは、胚盤胞栄養外胚葉細胞の増殖・分化には複数の子宮由来因子が強調して作用していることが示唆され、計画よりも多くの実験条件を設定する必要がある。これらの理由により計画よりもやや遅れて進捗している。

Strategy for Future Research Activity

バイオインフォマティックス解析により得られた胚盤胞活性化誘導の子宮由来シグナル因子候補の多くは、その発現がユビキタスなものであり、その検証にはin situでの解析が必要不可欠となる。免疫組織化学法やin situ hybridization法は有効な手段ではあるが、抗体の購入やプローブを作製する必要があるためスクリーニング的な用途としてはコストなどの面で問題が多い。このため今後は新たに琉球大学に導入されたレーザーマイクロダイセクション装置を活用し、子宮内膜上皮細胞のみからmRNAを抽出して胚盤胞活性化シグナル因子候補の発現検証を進める。また、すでに時期特異性とエストロゲン依存性が確認されたシグナル因子候補については、リコンビナントプロテインを胚盤胞の培養系に添加する実験系を確立し、解析を進める。

Causes of Carryover

抗体など使用する試薬に、他の研究プロジェクトと共通するものがあったため予定よりも使用額がわずかに少なくなった。

Expenditure Plan for Carryover Budget

研究計画に加えてあらたに導入する必要が生じたレーザーマイクロダイセクション法などに掛かる消耗品の購入に充てる。