2016 Fiscal Year Research-status Report
中枢グリア細胞における酸化ストレス防御のためのスパーオキシドディスムターゼの役割
Project/Area Number |
15K07768
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
中村 洋一 大阪府立大学, 生命環境科学研究科, 教授 (90180413)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森山 光章 大阪府立大学, 生命環境科学研究科, 准教授 (20275283)
高野 桂 大阪府立大学, 生命環境科学研究科, 准教授 (50453139)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 細胞外SOD / アストロサイト / エクセンディン4 |
Outline of Annual Research Achievements |
中枢グリア細胞には各種の神経伝達物質,栄養因子,サイトカイン類の受容体を発現していることが知られているが,それら受容体がグリア細胞機能の何をどの様に調節しているのかについて,全貌は明らかとなっていない。脳内で活性酸素種を低減して酸化的ストレスからの保護に重要な役割を果たしているアストロサイトについて,EC-SODの存在や動態について検討を加えることは,脳における活性酸素種の動態を理解して,中枢神経障害機構の解明,およびその治療法開発を構築する基盤となる。 エクセンディン-4 (Ex-4)はアメリカドクトカゲの唾液由来のペプチド(39 a.a.)でglucagon-like peptide-1 (GLP-1)の類似体である。GLP-1は脳において延髄の孤束核ニューロンでも産生されており,GLP-1受容体がニューロンやグリア細胞にも広く発現し神経保護的に働くことが報告されている。アミロイドβによる酸化ストレスを介したニューロン死を抑制することや,グルタミン酸の興奮毒性に対して保護的に作用すること,あるいは活性化アストロサイトの炎症性サイトカイン産生を低下させるという報告があり,アルツハイマー病やパーキンソン病のモデルマウスでも神経保護効果が報告されている。 本年度得られた興味深い結果は,Ex-4により刺激された培養アストロサイトではEC-SODのmRNAと蛋白質発現が濃度依存的に増加し,それはGLP-1受容体阻害薬により抑制されることからGLP-1受容体を介した反応であることが示唆される。しかしながらEC-SOD活性の増加は観察できなかった。翻訳後修飾や培養液中へ遊離についても更なる検討が必要であるが,神経保護作用を示すEx-4の作用機序として新に提唱できる可能性が高い。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度は申請書に記載した検討事項①「生細胞のEC-SOD活性測定法の確立と発展」がほぼ達成され,浸透圧変化の影響についても知見が得られた。それらに引き続き,検討事項②「EC-SODの調節因子の検索」のa.神経伝達物質について,今年度も新たな展開の一端を見出すことができた。他の2種類のSODを含めたmRNA発現の変化についてもこれからの検討課題となる。今後こなすべき検討事項は多い。 検討事項②の中のb.免疫制御物質についてはまだ検討できていない。今後これらについても網羅的に検討を加える必要がある。 検討事項③「PrPcのCu<sup>2+</sup>代謝機能との関わり」については,最近,シナプス小胞にグルタミン酸などの神経伝達物質とともにZn<sup>2+</sup>イオンが貯蔵されており,開口放出とともにZn<sup>2+</sup>がシナプス間隙に遊離されるという興味深い報告がある。細胞内外のZn<sup>2+</sup>や役割については謎が多いが,活性化アストロサイトのNO産生がZn<sup>2+</sup>により増強されるという奇妙な結果も得ている。EC-SODの動態についてこれからの検討事項としたい。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度は当初の申請書に挙げた検討事項③「PrPcのCu<sup>2+</sup>代謝機能との関わり」については,アミロイドβ(Aβ<sub>1-42</sub>)による刺激についても検討を開始する。 プリオン蛋白(PrPc)の生理機能として,Cu<sup>2+</sup>の代謝,すなわち,細胞内への取り込みや細胞外での貯留に関与していることが予想されている。一方プリオン蛋白断片(PrP<sub>106-126</sub>)が培養ミクログリアを刺激してNO産生などの活性化を引き起こすことが知られている。このPrPに加えて,アミロイドβ(Aβ<sub>1-42</sub>を細胞に作用させたときのSODの動態についても検討する予定である。Aβ<sub>1-42</sub>の凝集体形成については既に条件設定ができているが,PrP<sub>106-126</sub>についてはその重合状態により結果が左右されることが知られている。まずはPrP<sub>106-126</sub>の前処置法の検討から始める。 また,当研究室では最近新たに中鎖脂肪酸がグリア細胞活性化を抑制することを見出しているので,EC-SODの活性や発現についても中鎖脂肪酸の作用があるか否か検討したい。
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